利用報告書
課題番号 :S-17-NI-0040
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :アルミナ担持層の構造解析
Program Title (English):Structural Analysis of Al2O3buffer layers
利用者名(日本語) :桐林星光1), 丸山隆浩2)
Username (English) :H. Kiribayashi1),T. Maruyama2)
所属名(日本語) :1) 名城大学大学院理工学研究科, 2) 名城大学理工学部
Affiliation (English):1)Graduate School of Science and Technology、Meijo University, 2)Department of Applied Chemistry、Meijo University
1.概要(Summary )
化学気相成長(CVD)法による単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の作製が現在広く行われているが,その際,SWCNTの生成量を増加させるため,触媒金属粒子の担持層として厚さ数nmのアルミナ(Al2O3)層が用いられている。しかし,どのようなアルミナの物性が,触媒粒子にどのように影響を与えているかは,ほとんど調べられていない。本研究では,Rh触媒の担持層として,異なる手法で作製したアルミナを用い,その結晶性が,触媒粒子のサイズやSWCNTの生成量に与える影響について調べた。
2.実験(Experimental)
RFスパッタ蒸着により透過電子顕微鏡(TEM)用グリッド上にAl膜を堆積させ,大気中で自然酸化および600℃で熱酸化しAl2O3膜を形成した試料に対し,制限視野電子回折(SAED)像の観察を行い,結晶性の比較を行った。また,同条件で,SiO2/Si基板上にAl2O3膜を形成し,その上にRh触媒粒子を担持し,アルコールCVD法によりSWCNT成長を行い,生成量の比較を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に2つのAl2O3膜のSAED像を示す。自然酸化したAl2O3膜は,微結晶の存在を示す回折スポットは観測されず,アモルファス状態であることがわかった。これに対し,熱酸化したAl2O3膜からは多数の回折スポットが観測された。観測されたスポットの多くは,Diaspore型のAlOOHに対応していたことから,熱酸化によりDiasporeへの結晶化が進行していると考えられる。また,自然酸化したAl2O3膜上に堆積したRh触媒を用いたほうがSWCNT生成量が多く,アモルファス状態のAl2O3膜が,触媒担持膜として適している結果となった。
図1 (a)大気中で自然酸化したAl2O3膜と(b)熱酸化したAl2O3膜のSAED像.
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は,私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「グリーンイノベーション研究拠点形成プロジェクト」の支援を受けました。TEM観察では名古屋工業大学の浅香透准教授のお世話になりました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) H. Kiribayashi, T. Fujii, A. Kozawa, S. Ogawa, T. Saida, S. Naritsuka and T. Maruyama, J. Cryst. Growth,Vol.468(2017)p.p.114-118.
(2) H. Kiribayashi, T. Fujii, T. Saida, S. Naritsuka, T. Maruyama, MRS Advances, Vol. 2 (2017) p. p. 89-95.
(3) T. Maruyama, H. Kiribayashi, S. Ogawa, T. Fujii, T. Saida and S. Naritsuka, 2017 MRS Fall Meeting & Exhibit, 平成29年11月30日
(4) 丸山隆浩,桐林星光,才田隆広,成塚重弥,第78回応用物理学会秋季学術講演会,平成29年9月7日
6.関連特許(Patent)
なし