利用報告書

ナノカーボン膜の形成とその場観察
百瀬 成空
長野工業高等専門学校

課題番号 :S-16-SH-0018
利用形態 :共同研究型
利用課題名(日本語) :ナノカーボン膜の形成とその場観察
Program Title (English) :Synthesis of nanocarbon thin film and in-situ analysis
利用者名(日本語) :百瀬 成空
Username (English) :Noritaka Momose
所属名(日本語) :長野工業高等専門学校
Affiliation (English) :National Institute of Technology, Nagano College

1.概要(Summary )
グラフェンは高キャリア移動度、高光透過率から太陽電池等への応用が期待される。一方、その大面積化のために、CVD法による成長条件の確立が重要である。本研究では、銅基板上にエチレンガスによるCVD成長を行い、STM法により生成グラフェンのその場観察を目指し、生成膜のラマン分析により、所望のグラフェンの生成条件を検討した。

2.実験(Experimental)
実験には、信州大学設置「精密触媒制御ナノカーボン合成・解析装置」を使用した。本報告では同装置のうち、CVD機能を利用した部分を報告する。
エッチング処理を行った銅基板をCVD炉内に導入しN2およびH2ガスを導入し水素処理を行った。この後、炭素源としてH2で希釈したC2H4ガスを導入し反応させた。反応終了後,N2雰囲気下で冷却し、今回はSTM分析までは行わなかったため,大気中に取り出しラマン分光を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
反応温度700~1000℃の試料にすべてに欠陥由来であるD-peak (1350 cm-1),グラファイト由来である G-peak (1586 cm-1),グラフェンの層数による2D-peak (2680 cm-1)が確認された。反応温度が高くなると 2D-peakが増加し,グラフェン成長が進む傾向が見られた。また、同時にD-peakの減少も見られ、欠陥密度も軽減された。次に、図1に 2D-peak位置の反応温度依存性を示す。反応温度の上昇に伴う 2D-peakの高波数側へのシフトがあり、700~860℃成長では単層~2層グラフェンが得られるのに対して1000℃成長では多層となっていることがわかった。

図1 成長温度によるラマン散乱2Dピーク位置の変化

4.その他・特記事項(Others)
CVDによる試料作製、ラマン分析は信州大学大学院生岩味雅基氏、ミョータンテイ助教、橋本佳男教授らの支援によって行われた。
本研究の一部は、JSPS科研費 JP16K16227 の助成を受けた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 岩味 雅基, ミョー タン テイ, 蓮池 玲美,百瀬 成空,浦上 法之, 橋本 佳男, 伊東 謙太郎,平成28年度応用物理学会北陸・信越支部学術講演会,B01(平成28年12月10日)

6.関連特許(Patent)
なし

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