利用報告書

マルチフェロイクへテロ構造の創製
Satya Prakash Pati1), 宇佐見喬政1),谷山智康1)
1) 名古屋大学大学院理学研究科

課題番号                :S-19-NU-0011

利用形態                :機器利用

利用課題名(日本語)    :マルチフェロイクへテロ構造の創製

Program Title (English) :Fabrication of multiferroic heterostructures

利用者名(日本語)      : Satya Prakash Pati1), 宇佐見喬政1),谷山智康1)

Username (English)     : S. P. Pati1), T. Usami1), T. Taniyama1)

所属名(日本語)        :1) 名古屋大学大学院理学研究科

Affiliation (English)  :1) Department of Physics, Nagoya University

 

 

1.概要(Summary )

巨大な電気磁気結合効果が期待される強磁性体/強誘電体界面マルチフェロイクヘテロ構造の作製と磁気特性の電界効果を明らかにすることを目的として、本機器利用では、各種材料の組成、表面形状等の評価を実施した。

 

2.実験(Experimental)

界面マルチフェロイク構造として強磁性マンガン酸化物La1-xSrxMnO3/強誘電体PMN-PT(001)を選定し、PLD法を用いてエピタキシャルヘテロ構造を作製した。具体的には、PLDターゲットとしてLa0.7Sr0.3MnO3を用い、基板温度650℃、酸素分圧0.5 TorrでLa1-xSrxMnO3を100 nm成膜し、その後、基板温度850℃、酸素分圧200 Torrで30分間ポストアニールし、ヘテロ構造化した。作製したLa1-xSrxMnO3薄膜のSr組成を、分子・物質合成PF装置 走査型電子顕微鏡(SEM)JSM-7500FのEDXを用いて評価し、La0.62Sr0.38MnO3と決定した。以上により作製したLa0.62Sr0.38MnO3/PMN-PT界面マルチフェロイク構造に対して界面垂直方向に電界を印加し、La0.62Sr0.38MnO3の磁気特性の電界変調効果を磁気光学Kerr効果により評価した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

X線回折を用いて成膜したLa0.62Sr0.38MnO3の構造解析を行った結果、(001)配向した良好なエピタキシャル薄膜が得られていることが確認された。また、振動試料型磁力計により、La0.62Sr0.38MnO3薄膜のキュリー温度を345 Kと算出した。次にLa0.62Sr0.38MnO3/PMN-PTに対して磁気特性の電界変調効果を測定した結果、PMN-PTの歪曲線に対応するバタフライ型の磁気ヒステリシス曲線が観測された。この結果は、電界印加に伴うPMN-PTの歪が界面を介してLa0.62Sr0.38MnO3薄膜へ伝播し、La0.62Sr0.38MnO3の磁気弾性効果により磁気特性が変調された結果として理解される。一方、このヒステリシス曲線は電界を印加する方向に依存した残留電界状態を示すことが判った。一般にPMN-PTの分極反転は、電界印加に伴い70°反転、180°反転、109°反転の3種類の分極反転により進行することが知られている。このうち、70°反転、180°反転では電界印加方向に依存した残留電界状態は得られないことから、本研究で見出された結果は、109°分極反転に伴う界面歪方向の90°回転に起因した結果と考えられる。

 

4.その他・特記事項(Others)

本研究の一部はJST-CREST(JPMJCR18J1)の一環として行われました。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

  • P. Pati , T. Usami, and T. Taniyama, Annual Conference on Magnetism and Magnetic Materials (Las Vegas, USA), 4-8 Nov (5 Nov).
  • Zheng, T. Usami, T. Taniyama, 第43回日本磁気学会学術講演会(京大・吉田キャンパス), 25-27 Sep(26 Sep).
  • P. Pati, T. Usami, T. Taniyama, 2019年第80回応用物理学会秋季学術講演会(北大・札幌キャンパス), 18-21 Sep (18 Sep).
  • Usami, M. Itoh, T. Taniyama, Joint European Magnetic Symposia (Uppsala, Sweden), 26-30 Aug (28 Aug).

 

6.関連特許(Patent)

なし

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