利用報告書

空間反転対称性を持つトポロジカル磁性体の新規開拓
高橋英史1), 小野瀬雅穂2)
1) 大阪大学大学院基礎工学研究科, 2) 東京大学大学院物理工学科

課題番号 :S-19-MS-1050
利用形態 :共同利用
利用課題名(日本語) :空間反転対称性を持つトポロジカル磁性体の新規開拓
Program Title (English) :Development of topological magnets with spatial inversion symmetry
利用者名(日本語) :高橋英史1), 小野瀬雅穂2)
Username (English) :H. Takahashi1), M. Onose2)
所属名(日本語) :1) 大阪大学大学院基礎工学研究科, 2) 東京大学大学院物理工学科
Affiliation (English) :1) Osaka University, 2) The University of Tokyo

1.概要(Summary )
近年、スキルミオンと呼ばれるトポロジカルな磁気構造を持つ物質が盛んに研究されている。これらの物質は反転中心をもたないカイラル構造や極性構造の場合に安定に存在することが知られている。しかし、理論的には反転中心をもつ場合にも磁気的なフラストレーション効果や遍歴電子を介したRKKY相互作用により安定化することが報告された。申請者は分子研の共同利用実験で、反転対称性を持つ立方晶ぺロブスカイト酸化物Ba1-xLaxFeO3(x=0.1)において3次元トポロジカル磁気構造を示唆する実験結果を得た。具体的には、らせん磁性に転移する130K付近に置いて1~7Tの磁場の間に、らせん磁性転移する前に弱い異常が見られた。理論的に得られる相図との比較から、この弱い異常はトポロジカル転移によることが示唆された。

2.実験(Experimental)
 立方晶ぺロブスカイト酸化物Ba1-xLaxFeO3(x=0.1)の単結晶においてSQUID(Quantum Design MPMS-XL7)を用い磁化率の温度変化を測定した。実験条件は0.01~7Tの磁場範囲において、2~300Kでの温度変化を測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 図に酸化物Ba1-xLaxFeO3(x=0.1)の単結晶における磁化の温度変化を示す。0.01 Tにおいて100 K付近で強磁性的な磁化の増大がみられる。さらに磁場を加えると、磁化の温度変化は複雑になり、例えば、1Tでは130 K付近で強磁性的な相転移を示し、さら110 Kと100 K付近でも異常がみられる。さらにZFCとFCにおいても明瞭な差がみられた。これらの結果は磁場を変えることで複数の相転移が発現しさらにドメイン構造が形成されたことを示唆する結果である。この結果は、磁場によりトポロジカルな相転移が誘起されたことを示唆する結果であるが、現在この複雑な相転移の全体像及び起源解明のための研究を進めている。

図:Ba1-xLaxFeO3(x=0.1)の単結晶における磁化の温度依存性

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 青野 快, 高橋 英史, 石渡 晋太郎, 日本物理学会2019年秋季大会 令和元年9月17日
(2) 小野瀬 雅穂, 高橋 英史, 佐賀山 基, 山﨑 裕一, 十倉 好紀, 石渡 晋太郎, 日本物理学会第75回年次大会, 令和2年3月17日

6.関連特許(Patent)
なし

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