利用報告書

不純物置換された鉄系超伝導体の単結晶X線回折
浦田隆広1), 田邉洋一1), 平郡 諭2)
1) 東北大学大学院理学研究科, 2) 東北大学原子分子材料科学高等研究機構

課題番号 :S-14-MS-1046
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :不純物置換された鉄系超伝導体の単結晶X線回折
Program Title (English) :Single crystal x-ray diffraction study of impurity doped iron based superconductor
利用者名(日本語) :浦田隆広1), 田邉洋一1), 平郡 諭2)
Username (English) :T. Urata1), Y. Tanabe1), S. Heguri2)
所属名(日本語) :1) 東北大学大学院理学研究科, 2) 東北大学原子分子材料科学高等研究機構
Affiliation (English) :1) Tohoku University, 2) WPI-AIMR, Tohoku University

1.概要(Summary )
従来磁性元素含有化合物は超伝導に適さないと考えられていたが、2008年に鉄系超伝導体が発見された。鉄系超伝導はその超伝導転移温度Tcの高さ、及び元素と組成の組み合わせが豊富なことから実験と理論の両面から精力的に研究されている。鉄系超伝導体の超伝導発現機構として磁性揺らぎを起源とするs±波超伝導が多くの研究者により提案されているが、依然その詳細は明らかにされていない。鉄カルコゲナイド系超伝導体であるFeSeは最もシンプルな構造(右図)と組成を示す。他の鉄系超伝導体とは異なりこれまでにFeSeは単結晶が合成されていなかったが、近年単結晶育成法が確立されて以降、盛んに研究が行われている。
我々は超伝導の対称性を明らかにするという目的で、FeSeに対する不純物置換効果の研究を進めている。今回液相フラックスと温度勾配を用いることに依りFeSe単結晶の合成に成功し、さらにFeサイトを遷移金属(Co, Ni, Mn)で置き換えた不純物置換相の単結晶合成にも成功した。不純物置換量が希薄な相では磁気転移は観測されず、超伝導が消失した。当該相は鉄系超伝導の対称性を議論する上で最適であり、非常に興味深い。その単結晶サイズは比較的小さく、不純物置換量が希薄な相では原子散乱因子に大きな違いがない為、粉末X線回折ではその違いを明らかにすることが困難であった。微小試料の測定に対応しており、ヘリウム吹き付け冷却装置が完備されている回折装置を利用して不純物置換された超伝導体の結晶構造を明らかにすることを目的とする。
2.実験(Experimental)
実験にはRigaku MERCURY CCD-3を使用した。ヘリウム吹き付け冷却装置を用いて室温から20 Kまでの測定を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
試料の形状に依る測定の困難さが伴ったが、比較的良質な回折データが得られた。不純物濃度に依存してc軸長が系統的に変化していることが確認できた。極めて希薄な不純物濃度相に関してはデータの解析が困難であり、現在も解析を継続して行っている。
本利用課題で得られた成果は、アメリカ物理学会、及び日本物理学会においてそれぞれ口頭発表を行った。

4.その他・特記事項(Others)
特になし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Urata (Tohoku Univ.), Y. Tanabe (Tohoku Univ.), S. Heguri (WPI-AIMR, Tohoku Univ.), K. Tanigaki (WPI-AIMR, Tohoku Univ.), American Physical Society March Meeting 2015, Henry B. Gonzalez Convention Center, A0.11., San Antonio, Texas, US.
(2) 浦田隆広 (東北大院理)、田邉洋一 (東北大院理)、谷垣勝己 (WPI-AIMR, 東北大院理), 第70回年次大会日本物理学会, 23pBA-5, 早稲田大学平成27年3月23日.

6.関連特許(Patent)
特になし。

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