課題番号 ：S-14-MS-1045
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：異常な電子状態を有する鉄及び銅錯体の電子構造
Program Title (English) ：Electronic Structures of Iron and Copper Complexes with an Abnormal Electronic
利用者名（日本語） ：鈴木達也, 落合達矢,　増田秀樹
Username (English) ：T. Suzuki, T. Ochiai, H. Masuda
所属名（日本語） ：名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) ：Department of Materials Science, Nagoya Institute of Technology

１．概要（Summary ）
本研究では，異常な原子価を有する(i)二核銅錯体および(ii)鉄-窒素錯体の電子状態に関するものであり，それぞれの概要を以下に記す。
(i)チロシナーゼで見られる混合原子価二核銅(II,III)錯体をモデル系で設計・合成した。その生成を確認するために、極低温におけるEPRスペクトルを測定し、基底状態に関する情報を得た。また，(ii)ニトロゲナーゼの窒素活性化研究を進める中で活性化した鉄錯体と窒素との反応でside-on状態で小分子が捕捉されることを見出した。本研究ではそのX線構造解析においてside-on状態で配位した小分子捕捉錯体の構造が得られた。その小分子がN2, O2, C2の何れなのかを決める必要があり、14N2/15N2それぞれの窒素分子捕捉錯体について、極低温におけるEPRスペクトルを測定し、配位原子に関する情報を得た。

２．実験（Experimental）
装置はBruker社製ELEXSYS-II E500 CW-EPR spectrometerを使用した。直径4mmの石英管にサンプルを入れ液体窒素で凍結させた状態で測定器にセットし、液体ヘリウムを吹き付けて極低温状態にした。
３．結果と考察（Results and Discussion）
それぞれの結果・考察を記す。(i)二核銅錯体では，極低温状態でのEPRスペクトルにより完全に局在化した二核銅(II,III)錯体に由来するスペクトルを観測した。また更に昇温させることで局在化から非局在化へ、電子移動が活性化した状態についても観測され，二核銅(II,III)錯体の生成を確認した。また，(ii)鉄(I)錯体と窒素との反応で得られた錯体のX線構造から非常に珍しいside-onで配位した窒素錯体構造が得られ，その生成を確認するため、極低温状態にてEPRスペクトルを観測した。さらにラベル化した15N窒素錯体を合成し、同様に測定を行ったところ、それぞれのスペクトルでHyperfine splittingに違いが観測された。このことからside-on窒素錯体の生成を確認した。

４．その他・特記事項（Others）
なし

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) 落合達矢・猪股智彦・小澤智宏・増田秀樹,　錯体化学会第64回討論会, 2014年9月19日
(2) 落合達矢・猪股智彦・小澤智宏・増田秀樹,　 第47回　酸化反応討論会, 2014年11月14日
(3) 落合達矢・猪股智彦・小澤智宏・増田秀樹,　 第４５回中部化学関係学協会支部連合秋季大会
2014年11月29日
(4) ◯Tatsuya Ochiai, Inomata Tomohiko,Ozawa Tomohiro, Masuda Hideki, 7th Asian Biological Inorganic Chemistry Conference, 2/Dec./2014
(5) Tatsuya Suzuki, Jun Matsumoto, Yuji Kajita,, Tomohiko Inomata, Tomohiro Ozawa, Hideki Masuda, Dalton Trans., 44, 1017-1022, (2015)
(6) Tatsuya Suzuki, Yuko Wasada-Tsutsui,, Takahiko Ogawa, Tomohiko Inomata, Tomohiro Ozawa, Michael D. Fryzuk, Hideki Masuda, Inorg. Chem., in submission.
(7) 鈴木達也・Fryzuk D. Michael・増田秀樹, 錯体化学会第64回討論会, 2014年9月19日
(8) 鈴木達也・Fryzuk D. Michael・増田秀樹, 第45回中部化学関係学協会支部連合秋季大会, 2014年11月29日
(9) Tatsuya Suzuki, Michael D. Fryzuk, Masuda Hideki, 7th Asian Biological Inorganic Chemistry Conference, 2/Dec./2014

６．関連特許（Patent）
なし