利用報告書

発酵粕中に見られる脂質の同定
馬場千晶, 安部智子
東京電機大学理工学部

課題番号   :S-19-NM-0068
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) : 発酵粕中に見られる脂質の同定
Program Title (English) : Identification of lipids involved in a brewing lees.
利用者名(日本語) : 馬場千晶, 安部智子
Username (English) : C. Baba, T. Abe
所属名(日本語) : 東京電機大学理工学部
Affiliation (English) : School of Science and Engineering, Tokyo Denki University

1.概要(Summary)
発効粕である酒粕は清酒製造の際に副産物として発生するが、そのほとんどが廃棄されている。酒粕は清酒製造の際に作られる、もろみ (原料が発酵した柔らかい固形物) を圧搾し、その後に残る白色の固形物のことである。酒粕は、清酒の原料である米やこうじ、酵母由来の炭水化物やタンパク質、アミノ酸、ペプチド、ビタミンなどの栄養素を豊富に含んでいる。である。有用脂質の供給源として酒粕を用いることができれば廃棄物の削減につながる。さらに、酒粕は食品由来であるため、抽出した有用物質を化粧品や医薬品に使用する場合、安全な供給源となることが期待される。
本研究では、酒粕中に含まれる有用脂質の同定とその含有量を明らかにすることを目的とした。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
 LC-MS/MS (Zaprous ADV Q-Exactive system, AMR)
【実験方法】
市販の酒粕数種を試料として用いた。クロロホルム:メタノール:水の体積比が1:2:0.8となる溶媒を試料に加えて撹拌し、その後さらにクロロホルム:メタノール:水の体積比が1:1:1になるようにクロロホルムと水を加えて2層に分離した後、有機溶媒層を回収した。
回収した画分をTLCにより展開した。展開溶媒としてクロロホルム:メタノール:酢酸:水=20:3.5:2.3:0.7を用いた。展開後、いくつかの画分に分けてシリカゲルをTLCプレートからかき取り、その後、シリカゲルから溶出させた画分を回収した。回収した画分を70%メタノールに溶解し、コンディショニングしたMono spin カラムに供した。90%メタノールでカラムを洗浄した後、溶出画分を回収した。
溶出画分を遠心エバポレーターを用いて濃縮し、LC-MS/MS (Zaprous ADV Q-Exactive system, AMR) 分析に供した。カラムはCOSMOSIL 5C18-MS-Ⅱ、移動相として溶媒A (メタノール:5 mM酢酸アンモニウム=85:15) を用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
酒粕から抽出した脂質画分をそれぞれTLCにより展開し、ニンヒドリン試薬を噴射し、呈色した。用いた酒粕すべてで同じ位置にスポットが確認された。さらに、酒粕から抽出した脂質画分2および画分3をLC-MS/MS分析に供した結果を以下Fig. 1に示した。この結果からは、夾雑物が多く目的の脂質成分を同定することはできなかった。

Fig. 1 MS/MS spectrum of fraction 2 or 3from the sake lees.

4.その他・特記事項(Others)
NIMS分子・物質合成プラットフォーム服部晋也様には、実験方法の相談、使用装置の技術補助ならびに結果に対する解釈のご指導をいただきました。厚く御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.