利用報告書

金属錯体によるリポソーム空間の機能化
越山友美、大場正昭
九州大学大学院理学研究院

課題番号 :S-17-KU-0002
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :金属錯体によるリポソーム空間の機能化
Program Title (English) :Functionalization of liposomes by metal complexes
利用者名(日本語) :越山友美、大場正昭
Username (English) :Tomomi Koshiyama, Masaaki Ohba
所属名(日本語) :九州大学大学院理学研究院
Affiliation (English) :Faculty of Science, Kyushu University

1.概要(Summary)
 リン脂質の自己集積により形成される球状脂質二分子膜であるリポソームは、細胞膜のモデルとして、また、高い保持能と生体親和性からドラッグデリバリーのキャリアとして主に利用されている。我々は、リポソームを金属錯体の階層的融合空間と捉え、複数の反応が協同的に進行する化学反応システムの創製を目指している。リポソームの各々の領域に機能性金属錯体を選択的に組み込むことで、リポソーム空間を基盤とした高機能性空間の構築が期待される。本課題では、抗生物質チャネルを利用した内水相における配位高分子の直接合成を検討した。配位高分子は、分子貯蔵や分離能、触媒能、磁気特性などの様々な機能を有する優れた固体材料である。そこで、水中で安定であり、かつ同定が容易な三次元多孔性骨格を有するプルシアンブルー (PB) を内包したリポソームの作成と、水中におけるセシウム吸着能を評価した。
2.実験(Experiments)
 本実験では、金属源としてK3[Fe(CN)6] と モール塩(NH4)2Fe(SO4)2•6H2O、抗生物質チャネルとしてアンフォテリシンB (AmB) を用いた。まず初めに、凍結融解法で K3[Fe(CN)6] を内包させたリポソームを作製した。次いで、[Fe(CN)6]3− 内包リポソームの溶液に、モール塩と AmBを添加することで、リポソーム膜にAmBチャネルが形成され、リポソームの内水相へFe2+ イオンが流入し、内包した [Fe(CN)6]3− との反応により、内水相でPB 微粒子を合成した。ゼータサイザーゼータ電位・粒子径・分子量測定装置を用いて、反応過程におけるリポソームの粒径サイズを決定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 薄黄色の [Fe(CN)6]3− 内包リポソーム懸濁液へモール塩とAmBを添加すると、徐々に溶液は青味をおび、最終的にPB 由来の青色を呈した PB 内包リポソームを得た。AmBを添加しない場合は、色の変化は観察されず、PB形成には AmB チャネルが必須であり、かつ、内水相でのみPB形成が進行していることが示唆された。精製したPB 内包リポソームのUV スペクトルは、PB由来の700 nm前後のブロードな吸収ピークを示し、また、FT-IR スペクトルでは、Fe2+–CN–Fe3+ 架橋形成によるCN伸縮振動のシフトを確認した。ゼータサイザーによるサンプルの粒径測定では、[Fe(CN)6]3− 内包リポソームおよびPB 内包リポソーム共に、Z平均 (d nm) は100 nm程度であり、作成過程でリポソームが融合や凝集していないことを確認した。加えて、TEM による粒子観察より、直径が 7 nm程度のPB 微粒子の形成を確認した。PB内包リポソーム用いた水中におけるセシウム吸着実験では、内包されているPB 粒子へセシウムイオンが吸着され、バルクの PBよりも高いセシウム吸着能を示した。これは、バルクPB は5 nm程の微粒子が凝集して 50 nm程度の凝集体を形成しているのに対して、PB 内包リポソームでは PB 微粒子が分散して存在しているため、表面積が大きく吸着能が向上したと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Koshiyama, M. Tanaka, M. Honjo, Y. Fukunaga, T. Okamura and M. Ohba, Langmuir, 34, 1666-1672 (2018).
(2) ○越山友美、大場正昭「金属錯体を駆使したリポソーム空間の機能化」日本化学会中四国支部-広島地区化学講演会、広島大学、平成29年12月2日 など
6.関連特許(Patent)
なし。

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