普段はゴルフ場から定期的に送られてくる芝草の葉を、電子レンジで乾燥し、粉砕機で紛体にした後、近赤外分光装置を用いて分析しています。窒素やリンなどの12元素の含量を分析し、その結果からそれぞれにあった肥料を選ぶ助言をしています。
そうですね、弊社はアメリカの肥料の輸入販売を行っています。アメリカのゴルフ場では芝を科学的に分析して細かく管理するのは常識ですが、日本ではまだまだ広がっていません。芝(グリーン)をフラットで強靭な活力の高い状態に保つ事は良いゴルフ場の条件とも言えるでしょう。適切な肥料を与える事で芝の活力や耐病性が増し、無駄な肥料や農薬も減らすことができ、環境にも優しい(環境負荷の少ない)ゴルフ場管理を実現できます。
遠沈管を用いて芝を栽培し、肥料の違いなどによる生育状況を観察しています。また、土壌中の細菌の分析も検討しています。しかしながらご覧のとおり、ここには実験設備が限られています。そのため、NIMSへ行って実験させてもらっています。
NIMSはここに置いてある顕微鏡メーカーのライカ社から紹介されました。顕微鏡を使える場所があると。それからNIMSを利用するようになり、最先端の様々な装置を利用する機会を頂きました。
芝の葉表面にはシリカボディとよばれるケイ酸体などの存在が確認できています。しかし、芝種によってはそれらがあるものとないものがあったり、なぜ存在しているのかまでは十分にわかっていません。そこで葉の表面をNIMSにある共焦点レーザー顕微鏡や卓上型SEMを用いて観察しています。
まず、国際学会で発表することができました。国際芝草学会ではデータとしてNIMSの共焦点レーザー顕微鏡像による観察結果を発表したところ、発表後すぐに海外の大学から直接質問を受けるなど、高い興味を持って頂けました。学会発表や論文投稿もコンスタントにできるようになり、会社本体の取引にも良い影響が出ています。他の代理店からも、さらなる研究成果の期待を実感しています。
学位を取得したのが遅かったこともあり、卒業後は予備校講師や健康食品の会社などで働いていました。とあるキッカケで今の会社に入社することになり、その際このような実験室を構えることができました。
小学生のころ、顕微鏡を覗くのがとても好きでした。今でも生命の神秘を解明したいという情熱を持っています。ですから今、植物の研究をNIMSの最先端の装置を用いて行える事を心から感謝して(楽しんで)います。
企業にとってもメリットがあり、またアカデミック的な面白みのある仕事を続けて行きたいです。小さな会社でも世界と戦いたい。それを支えてくれるのはNIMSの皆様や装置を使える環境のお蔭です。
今後は農業分野への参入も視野にいれて活動する予定ですので、まだまだ研究を続けたいと思います。
私の家でも実験出来るかも?と心躍る実験室、また情熱のあるお話しを聞かせて頂き、大変楽しい取材となりました。宇城様のご出身が私の実家の近所とわかり(ちなみに八丁堀はNIMS箕輪さんにもゆかりの場所、御母堂のご実家の町だそうです。)和気藹々とインタビューを締めくくりました。