私は元々理系ではないんです。経済学部卒で、卒業後は商社のOLをしていました。ですので、科学については全くの素人でした。そんな人がカーボンナノチューブ(以下、CNT)の製品開発をする会社を立ち上げているなんて驚きますよね(笑
大学時代から商社で働いている間、ずっと水上スキーの選手で日本代表にもなっていました。社会人になってからも国際大会に出ていたのですが、両立が難しくなり、約10年間務めましたが会社をやめ、水上スキー一本で2年ほど過ごしていました。ケガで現役を引退することになりご縁があったナノテクベンチャー企業に就職したことが科学への第一歩となりました。
ナノテク関係の装置会社だったので、実験することもありました。学生実験なんてしたことがないので全く初めてでしたが、とても楽しかったですね。ある時、装置で処理したCNTのSEM(走査型電子顕微鏡)写真を見たときに、「次に来るのはこれだ!」と直感で思ったんです。
そのSEM写真では、CNTがほぐれているように見えました。それまでCNTがほぐれる=分散するという概念は世の中になかったのですが、これまでの実験でどのような原料でも複合するためには分散は必要だと感じました。そこからCNTに関して勉強し、CNTを使った複合材を作成したいという思いから、CNTの分散液の開発、販売、CNT複合材の開発へと進めていくことができました。
お客さんや教授との会話がついていけなかったことです。専門用語だらけで・・。ですが、わからないことは何でも聞き、論文も沢山読んで勉強しましたね。実験もわからないことは多かったですが、苦にはなりませんでした。なにより好奇心の赴くままに熱中して取り組める事が楽しかったです。
都立高専の先生とご縁があり、学生さんと共同研究しながら自身の実験を進めています。
現在は太陽熱吸収体や燃料電池のセパレーター等の研究を進めています。集熱体は太陽熱発電の材料としての利用が期待されています。日本ではまだ太陽光発電の方が多いですが、海外では太陽熱も多く利用されています。現在はスペインなど海外市場にチャンスを広げています。
九州大学の中嶋先生とは、CNTの会合でお会いしたことが何度かありました。昨年久しぶりに再会した際に、九大のナノプラ設備についてご紹介頂き利用することになりました。また利用だけでなく、中嶋先生と共同で平成26年度にNEDOエネルギー・環境新技術先導プログラムに申請し、採択されました。(※H26年度は信州大と他のNEDOプロジェクトにも採択)
これまで他の大きな補助金などはことごとく落ちてきたのですが、NEDOに採択されたことで変化があることを期待しています。
CNTに特化した装置が沢山あることも魅力ですが、何より中嶋先生にデータの考察などアドバイス頂ける事が一番の魅力だと思います。飛行機で九大まで行く価値は大いにあります。また利用料も安価ですので、何サンプルも測定しないといけない事が多いので、思う存分データが取れるのは本当に助かっています。
CNTの製品を一日も早く世に出すことです。エネルギー問題などに本当に役立つ日が来るように、日々実験、研究に励みたいと思います。
高専の中にラボ?!文系で水上スキーの選手?と衝撃の多いインタビューでしたが、初めから無理、と思わず好奇心と情熱があれば不可能はないんだと実感しました。また「こうあるべきだ」という固定観念を取り払う事が新しい技術を生む、という事は今の研究者に必要な新しい風かもしれない、と思いました。津田様のこれからの活躍を期待してやみません。