利用者インタビュー

―初めにご研究内容について教えて下さい。

我々は体外診断薬用高感度標識材料の開発を行っています。体外診断薬の中でも特にイムノクロマトの標識材料の開発に注力しています。イムノクロマトというのは例えば妊娠検査薬やインフルエンザの検査キットなど、といえばわかるでしょうか?
検査キットに液滴を垂らし数分待つと陰性か陽性かの線(テストライン)が浮き出るものです。
我々は少量で低濃度でも濃く陰陽の線が浮き出るための材料を開発しています。

 

―実際の材料はどのようなものを使うのでしょうか?

金属ナノコンポジット微粒子というものを使っています。
ラテックス微粒子に金属ナノ粒子が担持されています。金属は金やプラチナを使用しています。SEM写真からもわかるように均一に担持されている事がわかります。この粒子を作る技術が弊社オリジナルです。

 

―検査キットのどの部分にこの粒子は使われ、どのように機能するのですか?

検査キットのコンジュゲートパッド部分に抗体を結合させた金属ナノコンポジット微粒子を含浸しています。検査キットのサンプルパッド部分に検体抽出液垂らすと毛細管現象で微粒子がメンブレンの中を流れ、テストライン部分まで到達します。検体抽出液に抗原がある場合、テストラインに到達する間に抗体を結合させた金属ナノコンポジット微粒子と抗原が結合し、さらにテストライン部分に塗布してある抗体と反応することで、テストラインに線の色が浮かび上がります。
弊社の金属ナノコンポジット微粒子は、粒子1個当たり数百~数万個の金属ナノ粒子が担持されているため極めて強い着色性を示します。すなわち微量でも線の色が強く発色するという事です。既存の製品よりも、弊社の金属ナノコンポジット微粒子を利用した検査キットの方が、高感度に検出できるという事がわかっています。

―これらの材料の開発にあたり、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)はどのように支援に関わったのでしょうか。

インターネットでJAISTの前之園先生の研究を知ったことがキッカケです。最初は別の材料で先生との共同研究を行っており、ナノ粒子の合成や評価について相談させて頂いていました。その後、ナノプラットの事を教えて頂き、現在は機器利用で透過型電子顕微鏡を利用させて頂いています。

―ナノプラの機器を利用された感想を教えて下さい。

まず、共同研究契約を結ぶことなく、大学の先端機器を使用させていただける事にとても助かっています。企業では契約となると手間がかかるのですが、今の利用方法だと必要な時に使いたい分だけ利用する事ができ、利便性が高いと感じています。もちろん、安価に利用できるという点も大変助かっています。
また機器利用だけではなく、前之園先生を始めJAISTの教員の方には積極的に相談に乗っていただいています。
ただの機器利用だけだとどこに行ってもサービスは変わらないのかもしれませんが、教員の方に専門的な事を相談できるという点も非常に魅力です。

―今後の研究開発の目標について教えて下さい。

我々の所属しているグループでは、社内でも特に新しい事に挑戦しています。金属ナノコンポジット微粒子はイムノクロマトだけでなく様々な分野に応用できる材料と考えています。この開発を成功させることももちろんですが、この材料のアプリケーションを広げて新しい用途を見つけることも我々の目標です。

―お二人にとっての今後の目標について教えて下さい。

企業の研究開発に携わる人間としては、役に立つものが世に出ていく事は非常に幸せな事だと感じています。
よりよい技術を追求していけば、必ずよい製品に結び付くと感じています。研究からビジネスにつなげるには多くの困難がありますが、大学の力を借りながら、達成していきたいと思います。

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