名古屋工業大学
2012年度 成果事例
【研究目的】
カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の1次元ナノカーボン材料を探針先端に用いたナノカーボン探針は、走査プローブ顕微鏡探針の理想形の一つとして注目されている。このCNF探針に良好な導電性を付与できれば、形状測定のみならず、電気特性測定用の探針としても非常に有用である。本支援では、金属被覆CNF探針の精密電気特性評価を行った。
【成 果】
試料には薄い金属被覆を施したCNF探針(M-CNF)を用いた。CNF探針の作製には、「中規模カーボンナノファイバー室温合成装置」を用いた。ピエゾ微小駆動機構マニピュレータを装備した特型走査電子顕微鏡(SEM;支援装置)による電気特性測定では、対向電極にPtIr探針を用い、M-CNF探針の対向電極への押しつけに伴うM-CNF探針の変形の様子を確認しつつ測定を行った。また、支援装置「精密形状測定・局所磁気測定・局所電気特性評価装置」等による実測定モードによる物性評価も行った。
Fig. 1に電気特性測定時のM-CNF探針の押し付けの様子(変形の様子)のSEM像を示す。良好な電気特性の測定には十分な接触が重要となる。M-CNFでは探針が弾性的な機械特性を有しており、探針が破壊することなく十分な接触が可能であることがわかる。
Fig. 2にこうして得られた電気特性を示す。電流‐電圧特性は直線的(オーミック)な特性を呈しており、直線の傾きからその抵抗値は1.9 x 106 Ωと見積もられた(接触抵抗等を含めた総抵抗値)。Fig. 3に電気特性測定前後の探針の形状(SEM像)を示す。測定の前後で塑性変形は認めらない点は注目に値する。金属あるいはSi探針等では、試料への強い押しつけによって先端が損傷する場合が多々あるため、この弾性的な特徴は実用上極めて有用である。