名古屋大学

2012年度 成果事例

植物細胞への遺伝子導入カーボンナノチューブ材料の合成と細胞内局在の高分解能計測
aCNRS, Institut de Biologie Moléculaire et Cellulaire, b名古屋大学
Alberto Biancoa,Maged F. Seragb,加地範匡b,馬場嘉信b

【研究目的】
カーボンナノチューブ(CNT)は,動物細胞に対して,遺伝子や様々な化合物を導入するのに優れたナノ材料であることが示されてきました 。しかし,植物細胞は,動物細胞と同じ細胞膜のさらに外側にセルロースでできた細胞壁があるために,CNTのみならず他のナノ材料をもってしても遺伝子や化合物を導入するのが非常に困難でした。本研究では、植物細胞に遺伝子導入を実現できるCNT材料の合成と植物細胞内局在の高分解能計測による植物細胞内のCNT材料の挙動解明を目指しました。

【成  果】
本研究では、CNTに細胞壁を分解するタンパク質を融合させた新規材料を合成することで、世界で初めて、植物細胞にほとんどダメージを与えずに、遺伝子を導入することに成功しました。さらに、植物細胞内に導入されたCNT材料の植物細胞内の動態を高い空間分解能で解析できる方法を開発することで、細胞内小器官におけるCNT材料の局在を精密解析するとともに、動態の制御に世界で初めて成功しました。さらに、この成果により、CNT材料による植物細胞への遺伝子導入の効率を高めることに成功しました。本成果は、アメリカ化学会 Nano Letters, 2012, 12, 6145.として出版されました。また、米国出願特許(US12/665,186)の特許成立が2012年12月に決定しました。

図1.高分解能TEM(左)およびRaster Image Correlation Spectroscopy(右)による植物細胞内に導入された CNT材料の高分解能解析
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