名古屋工業大学
2014年度 成果事例
【目 的】
白金担持グラフェンは固体高分子形燃料電池の電極触媒材料として注目されており、ナノサイズ化による高効率化の観点から研究が進められている。しかし、白金はグラフェンとの結合が弱く、凝集により触媒効率が劣化するという問題がある。グラフェンの炭素原子の一部を窒素原子で置換したサイトは、電荷密度が著しく変化し、吸着原子が滞在しやすくなることが報告されている。そこで、白金担持グラフェンの構造を原子レベルで制御し、少量で高活性な触媒材料とすることを目的として、窒素ドープグラフェンの合成及びTEM観察を行った。
【成 果】
化学気相成長(CVD)法による窒素ドープグラフェンの合成を名古屋工業大学に依頼した。通常グラフェンの合成ではガス原料を用いるのに対し、炭素源及び窒素源となる2種類の固体原料(Fig. 1)を用いた。作成した試料はグリッドに転写し、球面収差補正透過型電子顕微鏡(TEM, JEM-ARM200F, JEOL)によって申請者が構造を解析した。
窒素置換サイトの特異な電荷は特定のフォーカスで撮像することで視覚化することができる。Fig. 2は30枚のTEM像を重ね合わせてSN比を上げ、フィルターによりグラフェン格子のコントラストを抑えて窒素置換サイトの電荷を強調したものである。X線光電子分光測定から約2%の窒素がドープされていることが分かっているが、TEMにより検出された窒素置換原子は0.01%程であり、窒素の多くは表面又はエッジに吸着していると考えられる。
また、暗視野法によりグレインサイズを計測したところ、通常のガス原料を使用したCVDグラフェン(1-4 μm)と比較して大きく、中には20 μmを超えるグレインが存在した。
以上、固体原料を使用したCVD法により、グレインサイズが大きく欠陥の少ない窒素ドープグラフェンを作製できることが分かった。