大阪大学
2014年度 成果事例
自己組織化ナノワイヤを用いた極微機能性ナノデバイスの創成
【目 的】
無毒で高いクラーク数を有するSiを用いた熱電素子は、廃熱から電気を取り出す熱電変換技術の民生利用において重要な役割を担うと予想され、ゼーベック係数S、電気伝導率σ、熱伝導率κによって導かれる熱電性能指数ZT(=S2Tσ/κ)の向上を目指す研究が現在世界中で行われている。特に近年の研究から、Siナノワイヤ表面におけるフォノン散乱により電子輸送を阻害することなく熱伝導率を劇的に減少させることが可能であることが明らかとなっており、Siナノワイヤを用いた熱電素子にますます注目が集まっている。本研究ではSiナノワイヤ素子の更なる熱電性能向上に向けて、不純物分布制御による電子輸送現象の変調と熱電物性への影響について検証を行った。
【成 果】
SiO2/Si基板上に滴下したBドープSiナノワイヤに電子線描画及びRFスパッタ装置を用いてSiナノワイヤを電極架橋し、マイクロヒーター及びナノ電極(四端子測定用、温度検出用)から成るナノワイヤ熱電物性測定素子を作製した(Fig.1)。本素子を用いてBドープSiナノワイヤの熱電物性を測定した結果、BドープSi/非ドープSi界面が急峻である程、高いゼーベック係数Sを示すことを明らかにした(最大パワーファクター値(S2σ) 2.0 mW/K2m)。種々の検証実験により、本効果が不純物ドープ層から非ドープ層へのキャリア拡散現象に基づく電気伝導率増加に起因する明らかとなった。今後、本設計指針を用いた更なる熱電性能の向上が期待される。