北陸先端科学技術大学院大学
2014年度 成果事例
質量分析による食品成分の網羅的検出および局在解明(1)、(2)
【目 的】
食品には複数の成分が混在しており、分離精製して検出することが一般的である。しかし煩雑な前処理の過程での目的物質、目的物資以外の未知物質のロス、食品成分全体を俯瞰的に解析することはできないという課題がある。食品に含まれる機能性成分は多数知られているが、近年、それだけを摂取するだけでは有効な結果を得られないと考えられている。やはり食品に含まれる成分との絶妙なバランスを理解することが重要である。
イメージング質量分析は抗体や蛍光物質を使用せずに、質量から直接、標的物質の局在を理解することが出来る。今回、質量分析装置を利用し、ジャガイモに含有する天然毒の局在解析を行った。
【成 果】
切片上から、m/z 868、852のシグナルが検出された。これらのシグナルをMS/MS解析により分析すると、ソラニン(m/z 868)、チャコニンで(m/z 852)あることが確認された。イメージングMSの結果より、塊茎、形成層、芽内部にはソラニン、チャコニンは存在せず、主に、芽の表面と、周皮に多く存在することが示された。特に、チャコニンは周皮においてソラニンよりも相対的に多く局在していた。このように食品衛生学上重要なデータを視覚的に表すことができたことは大きな成果である。
図 ジャガイモの天然毒局在解析
ジャガイモ切片の光学像(A)、ソラニン(m/z 868:[M+H]+)(B)と、チャコニン(m/z 852: [M+H]+)(C)のイメージングMS像。(E)と(F)は、イメージングMS像と光学像の重ね合わせ像。