千歳科学技術大学

2014年度 成果事例

2次元配向したハイブリッド・バイオ材料ナノ構造の構築
a千歳科学技術大学, b日本学術振興会
Viktor Fischera,b, Olaf Karthausa

【目  的】
貝殻の主成分が炭酸カルシウムであるように、炭酸化合物はバイオミネラルとして重要な役割を果たしている。これらの生体ハイブリッド材料の結晶形態は、非生体材料とは異なる。炭酸塩結晶の形成における拡散の役割を調べるために、混合ストロンチウム塩およびケイ酸塩を使用した。この研究の目的は水中の炭酸イオンの拡散によって、炭酸結晶の成長を理解し、新たな結晶構造を作成することである。

【成  果】
ビーカーの液面に垂直にガラス基板を入れ無機結晶を生成する実験方法は、重力によって増幅対流や拡散が起こり結晶形成が不規則になる問題が出てくる。一方、そのガラス基板を結晶化に必要な媒体(図1)の表面に置くと、重力の影響はなくなる。
生体結晶化のモデルを模倣するために、SrCO3/SiO2の共結晶を選んだ。大気中のCO2が水に溶けてCO32-とH+に解離し、水中のSr2+と反応する。SrCO3は結晶形成しながら、pHが下がり、ついに水中のSiO32-と反応し、SiO2は共結晶として沈殿する。二つのプロセスはどれも平衡状態であるが、時間がたつと、パターンが発生する。基板の表面で得られた結晶化パターンは、図2のように、基板の縁で結晶の密度の高い部分が現れ、中央部分は低かった。CO32-の拡散や濃度の違いで過飽和の値が変わり、過飽和の値が大きいとき結晶の密度が高く、値が小さいとき密度は低くなる。この現象は図2の式で示したように単位面積Aにおける結晶数Ndと基板の端からの距離dを使ってモデリングすることができる。また、CO32-源として、CO2の代わりに炭酸ジメチルを用いて水中でゆっくりと加水分解しCO32-を発生させることで、バイオミメティクな結晶化プロセスを制御することに成功した。形成された結晶の大きさは狭い分布で、その形はサンゴ(Colpophyllia Natans)に相似していることがわかった(図3)。これは、生物学的な結晶化には必ずしもタンパク質などの有機添加剤が必要でなく、沈殿剤(例えば、細胞呼吸によって生成されたCO2など)の発生メカニズムによって、または、過飽和の動力学的なわずかな変化によって制御できることを示している。研究成果はすでに論文Phys.Chem.Chem.Phys.(2015)6695-6699で発表されている。

CT_1_Fig1
図1:フローティング基板によるハイブリッド材料の作製方法

CT_1_Fig2
図2:結晶成長モデルと実験結果

CT_1_Fig3
図3:ハイブリッド結晶の電子顕微鏡写真、サイズ分布、サンゴの写真

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