北陸先端科学技術大学院大学
2014年度 成果事例
Au試料における逆光電子分光の測定
【目 的】
正・逆光電子分光装置 (図1) を用い、バンドギャップ (Eg) を決定する際、標準試料であるAu薄膜のフェルミ準位を基準にするが、特に逆光電子分光法 (IPES) は表面状態に非常に敏感であるため、Au薄膜の表面が汚染されていると信号強度が変化する可能性がある。本支援では、 IPES における金薄膜 (Au) の表面の清浄度による信号強度の変化を調査する事を目的とする。
【成 果】
用いた試料は (1) 大気暴露時間が30分のAu薄膜と (2) Arイオンスパッタを用い表面クリーニングを行ったAu薄膜の2種類である。図2に8 eVの信号強度で規格化した IPES測定の結果を示す。これより、 Au薄膜を30分間大気暴露すると30%程度信号強度は低下し、さらに9 eV付近に見られるピークの形状が不明瞭になる事が分かった。一方で、信号強度の立ち上がりがほぼ一致することが分かった。この事は、Au薄膜表面が大気暴露により汚染されても、立ち上がりのエネルギー位置をフェルミ準位の基準として使用可能である事を示唆する。このグラフよりAuのフェルミ準位のエネルギーを見積もった場合、7.5 eVであった。上記のAuのフェルミ準位を基準としてAlQ3のエネルギープロファイルを図3 に示す。直線近似法により求めたHOMO、LUMOはそれぞれ5.4, 2.9 eVであった。得られたEg は2.4 eVであり、文献値と同レベルであった。