物質・材料研究機構
2014年度 成果事例
Hydroxyapatite nanoparticles as drug carrier for cancer therapy
【目 的】
シトシン-リン酸-グアノシン(CpG)モティフをもつ合成オリゴDNA(ODN)はToll-like receptor9 (TLR9) を介した免疫賦活活性をもつ。このCpG ODNで惹起される免疫反応系はがんに対する免疫反応を担うナチュラルキラー細胞や細胞傷害性T細胞を活性化する。一方TLR9は細胞中のエンドリソソームに存在していることが知られており、CpG ODNでこの反応系を効率よく刺激するためにはCpG ODNをエンドリソソームに長く留めておけるようなデリバリーシステムが望ましい。本研究ではがん治療を目指したドラッグデリバリーシステムとして骨・歯の成分でもあるハイドロキシアパタイト(HAp)とCpG ODNの複合体を作成し、エンドリソソームへのCpG ODNの運搬・保持ならびにその結果としての免疫応答を評価した。
【成 果】
HApナノ粒子(Fig1)はODNを良く結合した(Fig.2)。また、HAp-CpG ODN複合体は既存のDNAの細胞導入試薬であるLipofectamine™ と比較しても免疫応答を強く引き起こしていた。さらに細胞内ではCpG ODN単体では見られなかったエンドリソソームへの集積がHAp-CpG ODN複合体では多く見られた(Fig.3)。これらの結果からHApナノ粒子はがん治療を目指した核酸医薬のドラッグデリバリーシステムとしてのポテンシャルを持っていることが示された。
Fig.1 Characterization of HAp particles
Fig.2 Loading of CpG ODN onto HAp particles
Fig.3 Intracellular localization of HAp-sCpG