利用報告書

光受容タンパク質クリプトクロムの光制御メカニズムの解明
山田大智1), 縣和哉1)
1) 名古屋工業大学大学院工学研究科

課題番号 :S-18-NU-0002
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :光受容タンパク質クリプトクロムの光制御メカニズムの解明
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :山田大智1), 縣和哉1)
Username (English) :
所属名(日本語) :1) 名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :

1.概要(Summary )
我々が研究対象とするクリプトクロム(CRY)は、FADを発色団として持つフラボタンパク質である。CRYの中でも、シロイヌナズナ由来のAtCRY2は、in vivoで光依存的にCRY自身がホモオリゴマー化することが知られている。この光依存的相互作用を利用して、光遺伝学のツールとして活用されており、より有用なツール開発のための研究が盛んに行われている。しかし、その光依存的相互作用が実現する分子メカニズムやどの程度の複合体を形成しているのかなど、ほとんどわかっていないのが現状である。そこで本研究では、分光学的手法を用いることで、AtCRY2の光依存的相互作用が実現する構造状態を解明することを目的とした。現段階では、AtCRY2の大腸菌を用いた発現と精製、フラビンの光還元反応とそれに続く散乱の増大を紫外可視吸分光法による測定で観測した。これはin vitroにおいてもAtCRY2が光依存的に多量体化することを示唆している。この時の会合数を動的光散乱(DLS)を用いて調べることで分子メカニズムの解明につなげていきたい。

2.実験(Experimental)
粒径測定装置(大塚電子製ELSZ-2)を使用し、常温での粒子径の測定をAtCRY2の光照射前と光照射後で、それぞれ行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 AtCRY2の粒子径の測定結果では、当初予想していた結果と逆で、光照射後の粒子径の方が小さいという結果が得られた。これは、光照射前の状態でも大きな粒子が観測されてしまい、DLSの特性上、小さい粒子はその大きな粒子にマスクされてしまい、正しい測定ができていないと事が考えられる。この寄与を除去するために、フィルターによる大きい粒子の除去を行ってから、測定することも試みたが、時間の経過に伴って、値が定まらないという結果になった。この時の問題は、測定が常温で行っていたので、タンパク質自体が不安定なため、変性や失活してしまっている可能が考えられた。
現在は、低温での測定ができる系の確立と常温でも測定ができる条件(クラウディング剤等の使用)をそれぞれ検証することで、AtCRY2が光依存的な多量体化における粒子径とその分布のデータを収得したいと考えている。

4.その他・特記事項(Others)
粒径測定装置の使用に際して、名古屋大学・伊藤氏の支援を得た。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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