課題番号 ：S-18-SH-0004
利用形態 ：共同研究型
利用課題名（日本語） ：摩擦撹拌処理によるAl-CNT複合材の機械的特性の改善
Program Title (English) ：Improvement in Mechanical Properties of Al-CNT Composite by Friction Stir Processing
利用者名（日本語） ：尾和 智信
Username (English) ：Tomonobu Owa
所属名（日本語） ：長野県工科短期大学校 生産技術科
Affiliation (English) ：Dept of Production Engineering, Nagano Pref. Institute of Technology

１．概要（Summary）
Al-CNT複合材は，実用Al合金に比べ，引張強度や縦弾性係数が著しく向上するが，延性は大きく減少し実用上の課題となる。その原因は脆性炭化物Al3C4の形成と成長に起因していると考えられるが，これを阻止・抑制する手段として熱処理や通常の塑性加工では不十分である．そこで，強いせん断変形を導入し微細組織を形成することができる摩擦撹拌処理の効果が期待される．その有効性について実験・検証する．
２．実験（Experimental）
市販の5083Al合金の切りくずと所定量の昭和電工製VGCF (MWCNT) を原料とし，三軸方向加振型ボールミル(BM)により混合・複合化処理し，5083Al-8%MWCNT複合粉末を作製した．これを金型に充填し，グローブボックス内で真空度200Pa以下，焼結温度550℃，加圧応力140MPa，1hr保持を行い，40×30×2 mmの真空加圧焼結試料（Al-CNT複合材）を得た．
Al母材に焼結板を入れるスペースを加工し，1.6mmの厚さにしたAl-CNT複合材を挟み込んで，母材とともに摩擦攪拌処理（FSP）し複合材料(摩擦攪拌部)を作製した．XRD，EBSD，TEMなどを使用し複合材料の組織特性を調べた．
３．結果と考察 (Results and Discussion）
焼結薄板を強化材として母材とともにFSPすることで，FSP条件の最適化に改善の余地はあるものの，Al合金中にMWCNTを比較的均一に混合分散できることを示した．作製した攪拌部組織は母材を超える引張強度を示した．延性の低下は，FSP処理の効果が表れ，FSP処理を行わない場合に比べ改善した．
Fig. 1に母材と各種摩擦攪拌部断面のEBSDマップを示す．FSPを行うことで結晶粒の微細化が図られ，CNTの添加でさらなる微細化が観察できた．このように，FESEM観察やEBSD観察などからFSPによる微細化の効果，組織の均質化の効果が観察され，そしてTEM観察などにより複合材添加によるさらなる微細化および微細な炭化物相の存在が示された．

Fig.1 EBSD maps showing cross section grain structure: (a) base material, (b) FSP composite produced with BM-sheet, (c) FSP composite produced with 200℃ sintered sheet, (d) FSP composite produced with 550℃ sintered sheet.

４．その他・特記事項（Others）
信州大学カーボン科学研究所の清水保雄特任教授および共同研究者の貝梅正二氏には，研究結果の討議や評価手法について的確な指摘を頂いた．記して感謝する．
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) Tomonobu Owa, Yasuo Shimizu: Materials Transactions Vol.59, No.11 (2018), pp.1798-1804.
(2) 若林，尾和，清水：日本金属学会北陸信越支部連合講演会，2018年12月1日
６．関連特許（Patent）　なし