利用報告書

硫化物半導体ナノ粒子の光触媒特性
葛谷俊博1)、犬飼英嵩2)、深田 純2)、濱中 泰2)
1) 室蘭工業大学, 2) 名古屋工業大学

課題番号                :S-19-NI-0015

利用形態                :共同研究

利用課題名(日本語)    :硫化物半導体ナノ粒子の光触媒特性

Program Title (English) :Photocatalytic properties of copper sulfide nanoparticles

利用者名(日本語)      :葛谷俊博1)、犬飼英嵩2)、深田 純2)、濱中 泰2)

Username (English)     :T. Kuzuya1), H. Inukai2), J. Fukada2), Y. Hamanaka2)

所属名(日本語)        :1) 室蘭工業大学, 2) 名古屋工業大学

Affiliation (English)  :1) Muoran Institute of Technology, 2) Nagoya Institute of Technology

 

 

1.概要(Summary )

半導体をバンド間光励起してキャリアを生成させると、光触媒反応が起こすことができる。このような機構とは異なり、銀などの貴金属ナノ粒子が可視光に応答して光触媒効果を示すことが報告されている。半導体のバンド間遷移とは異なり、伝導電子の局在プラズモン共鳴いよって生成するホットキャリアが原因と考えられている。半導体ナノ粒子の中には近赤外領域に局在プラズモン共鳴を示すものがあり、近赤外光応答型の光触媒となる可能性がある。そこで、1500 nm付近に局在プラズモンを示す硫化銅ナノ粒子を対象に検証実験をおこなった。

 

2.実験(Experimental)

直径20~30nmで厚さが6 nmの円板形状の硫化銅ナノ粒子を合成した。メチレンブルー法により、このナノ粒子の光触媒特性を調べた。ナノ粒子をメチレンブルー水溶液に投入して暗所で撹拌し、ナノ粒子の表面にメチレンブルーを吸着させた。吸着の進行を調べるため、水溶液中に残っているメチレンブルーの吸光度に基づいて、吸着が平衡に達したことを確認した。この時、水溶液のpH値を調整して、硫化銅ナノ粒子にメチレンブルーが効率よく吸着する条件を調べた。

48時間かけてメチレンブルーを吸着させた硫化銅ナノ粒子を遠心分離して取り出し、新しいメチレンブルー水溶液に投入して、キセノンアークランプの光を照射した。メチレンブルーの分解に伴う脱色の大きさを測定して、光触媒効果の効率を評価した。

主な使用装置

紫外・可視・近赤外分光光度計(JASCO V570)

遠心機(Sakuma Z326)

高分解能透過型電子顕微鏡(Hitachi HF-2000)

3.結果と考察(Results and Discussion)

pH値が11の場合に、メチレンブルーは最も効率よく硫化銅ナノ粒子に吸着された。これよりも高いpH値ではメチレンブルーが分解されてしまった。図1に照射光を選択して測定したメチレンブルーの分解の様子を示す。局在プラズモンに合わせた波長の光を照射してもメチレンブルーの分解はほとんどみられなかった。一方、短波長の光を照射して、バンドギャップを越えて電子を励起した場合にはメチレンブルーが分解された。

 

 

 

 

 

 

 

 

図1 メチレンブルーの脱色の進行

 

4.その他・特記事項(Others)

なし

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

(1) T. Kuzuya, T. Kuwada, H. Inukai, Y. Hamanaka, S. Hirai, Applied Surface Science, Vol. 493(2019)p.p.1278-1285.

(2) 深田純、宮川和樹、犬飼英隆、濱中泰、葛谷俊博, 第80回応用物理学会秋季学術講演会, 令和元年9月18日

 

6.関連特許(Patent)

なし

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