利用報告書

あらゆる基材に適用できるコーティング剤の開発とその評価
瀬戸 弘一, 原田 真緒, 新戸 浩幸
福岡大学工学部化学システム工学科

課題番号 :S-16-JI-0040
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :あらゆる基材に適用できるコーティング剤の開発とその評価
Program Title (English) :Development and evaluation of coating reagents that are broadly applicable to various substrates.
利用者名(日本語) :瀬戸 弘一, 原田 真緒, 新戸 浩幸
Username (English) :H. Seto, M. Harada, H. Shinto
所属名(日本語) :福岡大学工学部化学システム工学科
Affiliation (English) :Department of Chemical Engineering, Fukuoka University

1. 概要 (Summary)
糖鎖は生体内で生命現象の認識シグナルとして働いている。癌細胞の転移およびウイルスの感染などは細胞表面の糖鎖とタンパク質間の相互作用が深く関与している。材料表面上に糖鎖をコーティングした糖鎖界面は糖鎖密度が高いため、強い相互作用を形成する。糖鎖界面は特異的な分子認識を発現するため、バイオセパレーション、バイオセンシング、および細胞培養用の材料に応用できる。これまでの糖鎖コーティング手法はステップ数が多く、煩雑であることが問題点であった。また、基材によって糖鎖コーティングの手法が限定されてしまうことが難点である。
茶およびコーヒーなどに含まれているポリフェノールは、分子内に多数のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物である。ポリフェノール配糖体であるルチンは、糖鎖および親・疎水両用の接着機能をもつカテコール基を含有し、それぞれ特異的分子認識部位および接着部位として働く。そこで本研究では、-グルコシル化ルチン(Fig. 1)を用いて、あらゆる材料表面に糖鎖界面を形成した。

Fig. 1 Chemical structure of -glucosylated rutin used for coating reagent, which is applicable to various substrates.
2. 実験 (Experimental)
各種基板(金板、銅板、チタン、ガラス、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、およびポリテトラフルオロエチレン)を-グルコシル化ルチン溶液(10 g/L、リン酸緩衝液、pH 7.4)に浸漬し、30oCの暗所に静置した。48時間後、基板を取り出し、洗浄および乾燥させた。-グルコシル化ルチンのコーティングはX線光電子分光法(XPS、AXIS-ULTRA DLD、Shimadzu/Kratos)を用いて確認した。

3. 結果と考察 (Results and Discussion)
-グルコシル化ルチンをコーティングする前後での金基板上のXPSスペクトルをFig. 2に示す。-グルコシル化ルチンコーティング金基板上のスペクトルの286 eVに糖鎖部位中のC-Oに由来するピークが検出された。また、-グルコシル化ルチンコーティング後に炭素元素比が増加した。さらに、XPS測定より、銅板、チタン、ガラス、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、およびポリテトラフルオロエチレン上への-グルコシル化ルチンのコーティングを確認した。-グルコシル化ルチンは基板を限定しない糖鎖コーティング剤といえる。

Fig. 2 XPS spectra of Au substrates before and after coating of -glucosylated rutin; (a) C(1s) and (b) Au(4f).

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