利用報告書

アドバンスドESR法による米糠による環境計測
古川貢1,2,3), 大隣仁3), 平賀惇哉3), 藤田倖平3)(1) 新潟大学共用設備基盤センター, 2) 新潟大学大学院自然科学研究科,3) 新潟大学理学部)

課題番号 :S-20-MS-1043
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :アドバンスドESR法による米糠による環境計測
Program Title (English) :Environmental Measurements using Advanced ESR Spectroscopy of Rice Bran
利用者名(日本語) :古川貢1,2,3), 大隣仁3), 平賀惇哉3), 藤田倖平3)
Username (English) :K. Furukawa1,2,3), J. Otonari3), A. Hiraga3), K. Fujita3)
所属名(日本語) :1) 新潟大学共用設備基盤センター, 2) 新潟大学大学院自然科学研究科,3) 新潟大学理学部
Affiliation (English) :1) CCRF, Niigata University, 2) Grad. School of Tech. And Natur. Sci., Niigata University, Fac. of Sci., Niigata University

1.概要(Summary )
ヒトは植物性食品より、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を摂取している。植物性食品に含まれるミネラルは,土壌より吸収していることから育成環境により大きく異なることを示している。つまり、植物性食品の金属イオンを定性的・定量的に調べることで、育成土壌の環境計測への展開が期待できる。金属イオンの測定は,植物性食品から抽出後にICP質量分析により測定されるのが一般的である.近年,我々の研究室で,前処理が不要で簡便な測定手法としてESRを用いた測定法の開発を試みている.現在までに新潟県産コシヒカリの米糠において,①Q-band ESR法により高分解能スペクトル,②Pulsed Q-band ESR法により2次元 Electron Spin Transient Nutation(ESTN)スペクトルを得ることに成功してきた.一方で,基準となる比較対象が無く,得られたスペクトルの解釈が困難であった.そこで,2020年度は,含有金属量がすでに決定されている国立環境研究所の環境標準物質(玄米,茶葉)のESTN測定を行った.
2.実験(Experimental)
Electron Spin Echo Field Scan (ESEFS),2D Electron Spin Transient Nutation (ESTN)スペクトルは,Bruker E680 pulsed Q-band ESR装置により測定した.測定温度は,OXFORD CF935クライオスタット,ITC503温度コントローラーにより制御した.
試料として,国立環境研究所の環境標準試料(No.23 茶葉II)を使用した.
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に茶葉におけるESTNスペクトルを示した.ESTNスペクトルは,スピン量子数に比例するNutation周波数にてESEFS信号を分離する手法で,スピン量子数を直接観測することができる。得られたスペクトルは,8, 16.2, 25.9 MHzのNutation周波数に信号が観測された.27 MHzの信号は,6本の等間隔な信号が観測されており,これはMn(II)の超微細結合に特徴的な信号である.したがって,25.9 MHzはS = 5/2に対応することがわかり,それを基準にすると,上記の周波数は,それぞれS = 1/2,3/2,5/2に対応することがわかる.S=1/2は空気によって酸化された有機ラジカルである可能性が高く,それ以外にS=3/2が存在することがわかる.さらに,S=3/2は,超微細結合もしくは微細結合により5本に分裂した信号であることが明らかになった.現在,これらをシミュレーションにより同定を試みている.
4.その他・特記事項(Others)
なし.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
古川貢,計算科学研究センター・ナノテクノロジープラットフォーム事業合同ワークショップ「データ科学に基づく理論・計算科学と実験科学の協働を目指して」,
2021年1月12日
6.関連特許(Patent)
なし.

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