利用報告書
課題番号 :S-19-CT-0078
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :アミロイド凝集体の観察と凝集阻害物質の探索
Program Title (English) :Observation of amyloid aggregation and screening of its inhibitors
利用者名(日本語) :倉賀野正弘,徳樂清孝
Username (English) :M. Kuragano, K. Tokuraku
所属名(日本語) :室蘭工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Muroran Institute of Technology
1.概要(Summary )
アルツハイマー病、パーキンソン病、リウマチをはじめとするアミロイドーシスは、アミロイドβ(Aβ)、タウ、αシヌクレイン、血清アミロイドA等のアミロイド形成性タンパク質が凝集、蓄積することが発症の引き金となる。我々は量子ドットナノプローブを用い、蛍光顕微鏡下でアミロイド凝集阻害物質を探索する微量ハイスループットスクリーニングシステムの開発を行ってきた。本手法では、アミロイド凝集体の形成やその阻害を蛍光顕微鏡下で直接可視化することが可能であるが、解像度が低いため凝集体中に含まれる線維一本一本を観察することは不可能である。そこで、本研究では、より解像度の高いTEMでアミロイドβ、タウ、αシヌクレイン、血清アミロイドA等の凝集体の詳細な観察と凝集阻害物質による阻害効果の評価を行った。
2.実験(Experimental)
Aβ、タウ、リン酸化タウ、α-シヌクレイン、血清アミロイドAを量子ドットナノプローブと共に、37 ℃でインキュベートした。試料溶液をグリッドにのせ、10分間インキュベート後、水滴をろ紙で吸い、2.5%グルタルアルデヒドを含むPBSにのせて室温で5分間程度静置し、試料分子を膜面に固定した。パラフィルム上に1%リンタングステン酸の液滴を2つ用意し、試料側が水滴に接するように被せ、2つのリンタングステン酸水滴にそれぞれ数秒位ずつ接触させた。ろ紙で余剰の染色剤を吸収し、10分間自然乾燥させ、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。
・透過型電子顕微鏡(日立、H-7600)
3.結果と考察(Results and Discussion)
Aβ、タウ、リン酸化タウ、α-シヌクレイン、血清アミロイドAを量子ドットナノプローブと共に様々な条件下で凝集させ、TEMを用いて凝集体を観察後、タンパク質の違い、凝集条件の違い、阻害剤の有無による凝集体の形状の違いについて比較した。その結果、Aβ、タウ、リン酸化タウともヘパリン添加の有無にかかわらず凝集線維が観察された(図1)。また、凝集条件によって線維の形態が異なることが明らかになった(図1)。
図1 Aβ、tau、リン酸化tau凝集体のTEM観察
4.その他・特記事項(Others)
公立千歳科学技術大学ナノテク支援室の河野敬一先生、他スタッフの方々には、TEMの調整および使用法について適切なアドバイスをいただいた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) X. Lin, N. Galaqin, R. Tainaka, K. Shimamori, M. Kuragano, T.Q.P. Noguchi, K. Tokuraku, Int. J. Mol. Sci.,Vol. 21(2020)p.1978.
(2) R. Sasaki, R. Tainaka, Y. Ando, M. Kuragano, K. Ota, K. Monde, K. Uwai, K. Tokuraku, Nuroscience 2019 (Chicago), 令和2年10月21日 他4件
6.関連特許(Patent)
なし