利用報告書

エピタキシャル有機半導体pn接合の結晶性向上およびデバイス応用へ向けた探索
中山泰生1), 高橋加奈1), 竹内 陸1), 岩下政揮1),鶴田諒平1)
1) 東京理科大学大学院理工学研究科

課題番号 :S-19-MS-0018
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :エピタキシャル有機半導体pn接合の結晶性向上およびデバイス応用へ向けた探索
Program Title (English) :Improvement of Crystallinity of Epitaxial Organic Semiconductor pn-Junctions and Exploration toward Their Application to Electric Devices
利用者名(日本語) :中山泰生1), 高橋加奈1), 竹内 陸1), 岩下政揮1),鶴田諒平1)
Username (English) :Y. Nakayama1), K. Takahashi1), R. Takeuchi1), M. Iwashita1), R. Tsuruta1)
所属名(日本語) :1) 東京理科大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science and Technology, Tokyo University of Science

1.概要(Summary )
従来の有機薄膜太陽電池に用いられているバルクヘテロ型のpn接合では,内部の分子配列の秩序性が低く、励起子解離によって生成したキャリアの低い輸送特性が素子効率のボトルネックとなる。この問題に対し,最近,高い電荷移動度を示すp型・n型の有機半導体結晶薄膜を交互に積層し,薄膜面内方向に正負電荷を取り出す新しい発想の有機太陽電池が,貴所の平本教授らによって報告された[Kikuchi, et al., ACS Appl, En. Mater. 2 (2019) 2087]。一方,当研究グループでは,これまでにルブレン(C42H28)のような代表的なp型有機半導体の単結晶を基板として,その表面上にn型分子の結晶性薄膜をヘテロエピタキシャル成長させることに成功している[Tsuruta, et al., J. Phys. Cond. Mater, 31 (2019) 154001]。また,ルブレンが示す良好な電荷輸送特性の根源となる分子間バンド分散構造を,バルク単結晶試料に対する角度分解光電子分光(ARPES)測定によって実証している[Machida, Nakayama, et al., Phys. Rev. Lett. 104 (2010) 156401]。本研究課題では,ルブレン単結晶を基板とした高秩序なエピタキシャル有機半導体pn接合の創製,および高効率な結晶有機太陽電池の材料となるジナフトチエノチオフェン(DNTT)単結晶のARPES計測を実施した。
2.実験(Experimental)
ルブレン単結晶試料は当グループあるいは貴所平本研究室において,DNTT単結晶試料は貴所平本研究室において,それぞれ窒素気流中での気相再結晶により作製した。前者に対しては,貴所平本研究室の真空蒸着装置において,ルブレンのジ(トリフルオロメチル)ジメチル誘導体(fmルブレン)分子を積層し,pn接合を作製した。さらに,既報[Kikuchi, et al., Org. Electron. 64 (2019) 92]と同様の構造でモデル太陽電池を作製し,発電特性評価を行った。一方,後者については,貴所解良研究室においてARPES測定を実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
fmルブレン/ルブレン単結晶モデル太陽電池に対して疑似太陽光照射下において電流―電圧(IV)特性を計測したところ,暗条件ではほぼ絶縁体的であったIV特性が,光照射下ではダイオード的に変化することが確認された。今後,デバイス構造の最適化により発電特性評価の推進を計画している。一方,DNTT単結晶に対するARPES測定により,価電子バンド分散構造が実測された。見積もられた正孔有効質量は自由電子の1.3倍程度と軽く,有望な結晶性有機太陽電池であることが確認された。
4.その他・特記事項(Others)
試料作製およびデバイス特性評価にご協力いただいた貴所の谷原佑輔博士,伊澤誠一郎助教,平本昌宏教授,fmルブレン分子をご提供いただいた貴所の椴山儀恵准教授,DNTTのARPES計測にご協力頂いた貴所の長谷川友里博士,解良聡教授に感謝する。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 高橋加奈,他10名, 日本化学会第100春季年会,東京理科大学, [conference canceled]
(2) 竹内陸,他10名,日本化学会第100春季年会,東京理科大学, [conference canceled]
(3) 竹内陸,他10名,第80回応用物理学会秋季学術講演会,北海道大学,2019/9/18
(4) R. Takeuchi, 他12名, Tenth international conference on molecular electronics and bioelectronics, Nara, Japan, 2019/6/25.
6.関連特許(Patent) なし

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