課題番号 ：S-20-MS-0007
利用形態 ：協力研究
利用課題名（日本語） ：エピタキシャル有機半導体pn接合の結晶性向上およびデバイス応用へ向けた探索
Program Title (English) ：Improvement of Crystallinity of Epitaxial Organic Semiconductor pn-Junctions and Exploration toward Their Application to Electric Devices
利用者名（日本語） ：中山泰生1,2), 高橋加奈1), 中西優生2)，竹内　陸1), 伊藤航世2)
Username (English) ：Y. Nakayama1), K. Takahashi1), Y. Nakanishi2), R. Takeuchi1), K. Ito2)
所属名（日本語） ：1) 東京理科大学大学院理工学研究科, 2) 東京理科大学理工学部
Affiliation (English) ：1) Graduate School of Science and Technology, Tokyo University of Science
2) Faculty of Science and Technology, Tokyo University of Scienc

１．概要（Summary ）
従来の有機薄膜太陽電池に用いられているバルクヘテロ型のpn接合では，内部の分子配列の秩序性が低く、励起子解離によって生成したキャリアの低い輸送特性が素子効率のボトルネックとなる。この問題に対し，高い電荷移動度を示すp型・n型の有機半導体結晶薄膜を交互に積層し，薄膜面内方向に正負電荷を取り出す新しい発想の有機太陽電池が，貴所の平本教授らによって報告された[Kikuchi, et al., ACS Appl, En. Mater. 2 (2019) 2087]。一方，当研究グループでは，これまでにペンタセン(C22H14)のような代表的なp型有機半導体の単結晶を基板として，その表面上にn型分子の結晶性薄膜をヘテロエピタキシャル成長させることに成功している[Nakayama, et al., ACS Appl. Mater. Interf. 8 (2016) 13499]。また，単結晶有機半導体が示す良好な電荷輸送特性の根源となる分子間バンド分散構造を，バルク単結晶試料に対する角度分解光電子分光(ARPES)測定によって実証している[Review: Nakayama, et al., J. Mater. Chem. C 8 (2020) 9090]。本研究課題では，単結晶有機半導体を基板とした高秩序なエピタキシャル有機半導体pn接合の創製と高効率な結晶有機太陽電池への応用を目指す基礎研究として，単結晶有機半導体そのものおよび接合部の構造および電子状態を調査した。
２．実験（Experimental）
単結晶試料は窒素気流中での気相再結晶により，接合試料は真空蒸着法により，いずれも当グループあるいは貴所平本研究室における既存装置にて作製した。具体的には，単結晶ルブレン(C42H28)上にC60あるいはジ（トリフルオロメチル）ジメチルルブレン(fmルブレン)を積層した接合，および単結晶ジナフトチエノチオフェン(DNTT)上にC60を積層した接合を検討した。前者の接合系については，貴所平本研究室においてモデル太陽電池の作製と電気特性評価も試みた。
３．結果と考察（Results and Discussion）
昨年度に引き続いて単結晶DNTTの電子状態解析を進め，正孔有効質量の異方性を実験的に決定することに成功した[論文1]。これを踏まえ，単結晶DNTT上にC60を積層したpn接合に対する構造評価に着手し，C60がDNTTに対してエピタキシャル成長した高秩序接合が実際に形成されていることを示す結果が得られている。
　単結晶ルブレン上にfmルブレンを積層した接合についても高秩序接合の形成が確認され，さらに接合部におけるエネルギー準位関係を決定することにも成功した。一方，C60-ルブレン接合については，安定した発電特性が得られるモデル素子構築が今後の課題である。
４．その他・特記事項（Others）
試料作製およびデバイス特性評価にご協力いただいた貴所の伊澤誠一郎助教，平本昌宏教授，fmルブレン分子をご提供いただいた椴山儀恵准教授，ARPES計測にご協力頂いた長谷川友里博士，解良聡教授に感謝する。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) R. Takeuchi, S. Izawa, M. Hiramoto, Y. Nakayama, et al., J. Phys. Chem. C, Vol. 125（2021）p.p. 2938−2943. [Supplementary Cover に選定]
(2) K. Fujimoto, et al., Chem. Asia J., Vol. 16（2021）p.p. 690-695.
(3) Y. Nakayama, S. Izawa, M. Hiramoto, et al., Materials (Basel), Vol. 13（2020）1978.
６．関連特許（Patent）　なし