利用報告書
課題番号 :S-16-CT-0056
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :オステオカルシンの構造と受容体との結合状態の解析
Program Title (English) :Conformational analysis of osteocalcin and its binding mode with receptor protein
利用者名(日本語) :平田雅人
Username (English) :M. Hirata
所属名(日本語) :九州大学大学院歯学研究院
Affiliation (English) :Dental School, Kyushu University
1.概要(Summary )
オステオカルシン(OC)は骨芽細胞が分泌するタンパク質であるが、Gla型とGlu型の2つの分子形態がある。近年、Glu型OCは血糖値を調節する内分泌作用を有する事が分かり、注目を集めている。我々はマウス個体を用いた研究によってGlu-OCの経口投与による代謝改善効果を確認した。また、Gla-OCでも経口投与すると小腸内腔内にはGlu-OCとして存在することが分かり、Gla→Gluの変換の際の構造変化を解明したいと考えている。更に、Glu-OCの受容体と考えられているGPRC6Aとの結合状態を明らかにしたい。この研究は千歳科学技術大学との共同研究により、CD(円偏光二色性)やNMRを用いてGlaの脱炭酸による内分泌作用活性化の機構を解明することを目的とする。
今年度は、安定同位体(15Nや13C)で標識したGlu-OCの大腸菌による大量発現系を確立し、多核多次元NMR測定の試料作成を目指した。
2.実験(Experimental)
チオレドキシンは比較的可溶性が高く、大腸菌での発現量が多いことから融合パートナーとして選んだ。さらにT7 プロモーターを利用したpET ベクターによる発現系を改良し、His-tag 配列を含むチオレドキシンのC 末端側にウシ由来オステオカルシン遺伝子を融合した発現ベクターを構築した。また、融合部位に酵素切断サイトとしてエンテロキナーゼ認識部位及び、プレシジョンプロテアーゼ認識部位を導入し、得られた融合タンパク質からオステオカルシン部位の切断を行い、ペプチド部分を単離するデザインを行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
小規模での発現実験では良好な結果が得られたが、安定同位体標識のための大量発現系では発現量が少なく、現在発現条件の改良を行っている。発現量が向上すれば、安定同位体標識実験に移行する予定である。
4.その他・特記事項(Others)
・参考文献
(1) M. Mizuguchi, R. Fujisawa, M. Nara, K. Nitta, K. Kawano, Calcif Tissue Int 69, 337–342 (2001)
(2) T. Yoshizawa, A. D. Fattore, R. A. DePinho, A. Teti, P. Ducy, and G. Karsenty, Cell, 142, 296–308 (2010)
・謝辞
本研究は、千歳科学技術大学 オラフ・カートハウス教授ならびに河野敬一シニアアドバイザーとの共同研究である。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) S. Kobayashi, K. Kawano, T. Aizawa, A. Mizokami, O. Karthaus and M. Hirata, Peptide Science, 79-80 (2016)
(2) 小林翔太、河野敬一、相沢智康、溝上顕子、カートハウス オラフ、平田雅人、 第53回ペプチド討論会、平成28年10月26日
(3) Hayashi Y, Kawakubo-Yasukochi T, Mizokami A, Takeuchi H, Nakamura S, Hirata M., J. Cancer, 7, 1605-9 (2016)
(4) Yasutake Y, Mizokami A, Kawakubo-Yasukochi T, Chishaki S, Takahashi I, Takeuchi H, Hirata M., Am J Physiol Endocrinol Metab, 310, E662-E675 (2016) (5) Mizokami A, Wang D, Tanaka M, Gao J, Takeuchi H, Matsui T, Hirata M., Biosci Biotechnol Biochem, 1-8 (2016)
(6) Kawakubo-Yasukochi T, Kondo A, Mizokami A, Hayashi Y, Chishaki S, Nakamura S, Takeuchi H, Hirata M., Obesity, 895-907 (2016)
6.関連特許(Patent)
なし







