利用報告書
課題番号 :S-17-MS-1086
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :カウンターイオンを有するベンズアミジナート架橋ルテニウム二核錯体の単結晶
X線構造解析と磁化率測定
Program Title (English) :Single crystal X-ray diffraction analyses and magnetic susceptibility measurements of benzmidinate-bridged diruthenium complexes with counter-ions
利用者名(日本語) :片岡 祐介, 奧野 愛里
Username (English) :Y. Kataoka, A. Okuno
所属名(日本語) :島根大学大学院総合理工学研究科
Affiliation (English) :Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering,
Shimane University
1.概要(Summary )
アミジナートが配位したルテニウム二核錯体は、アミジナート部位の分子構造に由来してルテニウム二核骨格の酸化数が劇的に変化する事で知られている。昨年度、我々は、酢酸ルテニウム(II,III)二核錯体とベンズアミジン塩酸塩(Hbam・HCl)を高温で反応させることで、テトラキス(ベンズアミジナート)ジルテニウム二塩化物錯体[Ru2(bam)4Cl2] (1)が得られることを明らかにし、その分子構造を単結晶X線構造解析によって決定する事に成功した。また、磁化率測定の結果、本錯体(1)は、S=1のスピン状態を有するルテニウム(III,III)二核骨格であることを明らかにしている。(Y. Kataoka, et. al. Polyhedron, 2017.)。最近、我々は、上記の錯体(1)と銀塩(テトラフルオロ硼酸銀, 硝酸銀)を暗光下で反応させる事で、錯体(1)の軸位に配位していた塩素イオンが脱離したベンズアミジナート架橋ルテニウム二核錯体[Ru2(bam)4(BF4)2]と[Ru2(bam)4 (NO3)2]を得ることに成功している。本申請研究では、これらの錯体の単結晶X線構造解析および磁化率測定を実施した。
2.実験(Experimental)
ベンズアミジナート架橋ルテニウム二核錯体の合成とそれらの結晶化は、申請者の所属機関にて行った。測定に使用するサンプルは、結晶化溶媒に浸した状態(X線回折)およびゼラチンカプセルに内包した状態(磁化率測定)で分子科学研究所に持参した。単結晶X線回折測定は、単結晶X線回折装置RIGAKU MERCURY CCD-1, CCD-2, CCD-3を使用した。測定温度は、−123℃に設定した。単結晶は、クライオループ及び流動パラフィンを使用してゴニオメーターヘッドに固定した。反射データは、Crystal Clearで処理し、その後、Crystal Structureなどのソフトウェアを使用して構造解析を行った。磁化率測定は、SQUID型磁化率測定装置MPMS-7 & XL7を使用して測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
単結晶X線構造解析の結果、[Ru2(bam)4(BF4)2]と[Ru2(bam)4 (NO3)2]の構造は、カウンターイオンとして存在するはずであったNO3-, BF4-アニオンがルテニウム二核骨格の軸位に配位した大変珍しい構造である事が確認できた。これらの錯体の磁化率測定を行った所、室温の有効磁気モーメントは、約2.83 B.M.となり、温度の減少に伴い、有効磁気モーメントが顕著に減少するゼロ磁場分裂が確認された。以上の結果から、得られた2種類の錯体の構造を決定し、そのルテニウム二核の価数をRu26+と決定する事ができた。
Fig.1. [Ru2(bam)4(NO3)2]の単結晶X線構造
4.その他・特記事項(Others)
特になし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)奧野, 片岡, 崎山, 満身, 半田, 2017年日本化学会中国四国支部大会, 1N17P
6.関連特許(Patent)
なし