利用報告書

カブトムシ外骨格の観察及び元素分析
森田 慎一1) (1) 基礎生物学研究所)

課題番号 :S-20-MS-1070
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :カブトムシ外骨格の観察及び元素分析
Program Title (English) :SEM-EDX analysis of Japanese rhinoceros beetle cuticle
利用者名(日本語) :森田 慎一1)
Username (English) :Shinichi Morita1)
所属名(日本語) :1) 基礎生物学研究所
Affiliation (English) :1) National Institute for Basic Biology

1.概要(Summary )
甲虫の体表面は硬い外骨格で覆われている。このような硬い外骨格はどのような分子メカニズムで形成されるのだろうか? 我々は甲虫目に属するカブトムシをモデルにこの問題に取り組み、ノックダウンするとカブトムシ外骨格の硬度が減少する転写因子を見出すことに成功した。本共同研究ではノックダウン個体とコントロール個体の外骨格を構成する元素を分析・比較し、機械的特性に差異が生じる原因を解析する。
2.実験(Experimental)
各試料に対し、クチクラ層の観察、および元素分析を行ない、機械的特性に差異が生じる原因について考察することを目的としている。具体的には、乾燥した試料を適切なサイズに切断し、樹脂包埋、ミクロトーム法により表皮部の断面試料を作製し、帯電防止のために Carbon を薄く蒸着した。その後、走査電子顕微鏡により、epi-,exo-, endo- の各クチクラ層の膜厚評価を行ないさらに、SEM-EDXを用いて金属及びミネラル成分の検出、および分布の比較を試みた。断面試料の作製以降のプロセスは、すべて分子研・機器センターに設置されている機器を用いて実施していただいた。
使用機器
電子顕微鏡 低真空分析走査電子顕微鏡(低SEM) Hitachi SU6600
Carbonコーター SC-701CT
ミクロトーム ライカULTRACUT UCT

3.結果と考察(Results and Discussion)
 元素分析により外骨格を構成する元素をコントロール個体と比較した結果、ノックダウン個体で複数の成分において増減を検出することができたが、その差はわずかなものであった。また走査電子顕微鏡を用いたクチクラ層の観察の結果、ノックダウン個体の外骨格はコントロール個体と比較し顕著に薄くなっていることが明らかになった。以上の結果から、ノックダウンによるカブトムシ外骨格の硬度が減少は、クチクラ層の成分の変化よりもむしろ厚さの減少が原因であると考えられた。

4.その他・特記事項(Others)
本共同研究は、分子科学研究所・機器センターの石山修特任研究員に支援していただいた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 森田慎一・加藤輝・前野哲輝・新美輝幸: マイクロフォーカスX線CT法によるカブトムシの角形態の観察と計測. 第14回 NIBB Bioimaging Forum 「非光学的モダリティによる生物イメージングの新展開」. オンライン開催(Zoom), 2020年11月6日.(招待)

6.関連特許(Patent)
なし。

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