利用報告書
課題番号 :S-20-NI-0039
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :カーボン材料の分光測定
Program Title (English) :Spectroscopic measurement of carbon material
利用者名(日本語) :近藤博基1), 射場信太朗2), 堀勝1)
Username (English) :H. Kondo1), S. Iba2), M. Hori1)
所属名(日本語) :1) 名古屋大学低温プラズマ科学研究センター, 2) 名古屋大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Center for low-temperature plasma sciences, Nagoya University, 2) Graduate school of engineering, Nagoya University.
1.概要(Summary )
基板に対して垂直に成長した多層グラフェンシートからなるカーボンナノウォール(CNW)に対して、可視領域における透過率・反射率の分光測定を行った。CNWの成長に使用した合成石英基板と比較して、全体に低い透過率に加え、グラフェン由来の紫外線領域での吸収が観測され、CNW特有の光学特性が明らかとなった。
2.実験(Experimental)
ラジカル注入型プラズマ支援化学気相堆積(RI-PECVD)装置を用いて、合成石英基板上に800°Cで合成したCNWに対して、UV/VIS/NIR分光光度計(日本分光製V-570)を用い、入射角0〜80度に対する透過率と反射率を測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1は、合成石英基板上に成長したCNWに対する透過率測定の結果である。比較として、合成石英基板のみの透過率特性もあせて示している。合成石英基板と比較して、全体に透過率は低い値となっており、目視で確認されるCNW表面の黒色の様相と一致している。一方、CNWの場合では、波長261 nm近傍において、透過率が大きく減少している。また、それ以外の波長領域において、その他の強い吸収はみられない。このような、紫外線領域にのみ吸収があり,それ以外に強い吸収はみられない傾向は、グラフェンで観測されている特長と一致している。これらの結果から、CNW特有の光学特性を実験的に明らかにすることができた。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献:
- Hiramatsu, K. Shiji, H. Amano, and M. Hori, “Fabrication of vertically aligned carbon nanowalls using capacitively coupled plasma-enhanced chemical vapor deposition assisted by hydrogen radical injection”, Appl. Phys. Lett. 84 (2004) 4708-4710, DOI: 10.1063/1.1762702
- Masaru Hori,Mineo Hiramatsu, “Carbon Nanowalls Synthesis and Emerging Applications”, Springer Wien New York, 2010 ISBN 978-3-211-99717-8
- Kondo, W. Takeuchi, M. Hori, S. Kimura, Y. Kato, T. Muro, T. Kinoshita, O. Sakata, H. Tajiri, and M. Hiramatsu, “Synchrotron x-ray analyses of crystalline and electronic structures of carbon nanowalls”, Appl. Phys. Lett. 99 (2011) p. 213110, DOI: 10.1063/1.3659470
- Petr Slobodian, Pavel Riha, Hiroki Kondo, Uros Cvelbar, Robert Olejnik, Jiri Matyas, Makoto Sekine, and Masaru Hori, “Transparent elongation and compressive strain sensors based on aligned carbon nanowalls embedded in polyurethane”, Sensors and Actuators A: Physical 306 (2020) p.111946, DOI: 10.1016/j.sna.2020.111946
用語説明:
- カーボンナノウォール
基版に対して垂直に成長した多層グラフェンシートで構成されている、カーボンナノ材料の一種。一般に、プラズマ支援化学気相堆積(PECVD)法(後述)などプラズマプロセスで合成される。広い比表面積と、上端部の高密度なグラフェンエッジ、グラフェン由来の特徴的な電子物性などから、バイオセンサなど様々な応用が期待されている。
- ラジカル注入型プラズマ支援化学気相堆積(RI-PECVD)装置
高周波電力による容量結合型プラズマ(CCP)と、マイクロ波を用いた表面波プラズマ(SWP)の2つのプラズマ源を、多孔電極を介して上下に接続したタンデム構造を有するPECVD装置。それぞれにCH系ガスとH2ガスを導入して放電した2種類のプラズマにより、C系ラジカルとHラジカルを個別に高い制御性で生成できる。これにより、CNW(前項)をはじめとするカーボンナノ材料の高精度な制御合成を可能にする。
謝辞等:
本実験の実施にあたり、測定の原理や方法に関して丁寧にご指導いただき、また設備の手配などをサポートいただいた、名古屋工業大学 物理工学科・物理工学専攻 教授・濱中泰先生に心より感謝申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。