利用報告書

ガラス流路の作製
日野 和之1)
1) 愛知教育大学教育学部

課題番号 :S-16-MS-3001
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ガラス流路の作製
Program Title (English) :Fabrication of glass microchannels
利用者名(日本語) :日野 和之1)
Username (English) :K. Hino1)
所属名(日本語) :1) 愛知教育大学教育学部
Affiliation (English) :1) Aichi University of Education

1.概要(Summary )
棒状のナノ粒子である金ナノロッドは、プラズモン吸収や増強電場を反応場やセンサー材料として利用するために、その集合構造の制御に強い関心がもたれている。我々はこれまでに、金ナノロッドに外部電場を印加することによって電場方向に配列させることを吸収スペクトルや小角X線散乱測定により追究してきた。このために、2枚のITOガラス電極で、溶液層をはさんで電圧をかける形の電場セルを開発した。しかしながら、このセルは試料の注入部が開いていることとバッチ型であるため、1)揮発性の溶液試料の測定が困難である、2)ショートする可能性がある、3)長時間の測定で試料にダメージがある、4)電場強度を十分に稼げないなどの問題点があった。そこで、これらの問題点を改良・改善するために、装置開発室施設利用によりガラス流路の作製を依頼した。

2.実験(Experimental)
今年度は、一方のガラス基板(厚み:150 µm)にウェットエッチングによってコの字型の溶液槽(深さ:20 µm)を作り、もう一方のガラス基板に通液用の穴をあけた。その後、それぞれにITO膜を外注により成膜した。2枚のガラス基板同士を接着し、コネクターを取り付けて完成させた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
セルを閉じた形にできたため、1)揮発性のトルエン溶液試料でも電場測定が可能となった。加えて、ITO膜をガラス基板の端から少し控えて成膜したことにより、2)1500 Vの高電圧を印加してもショートのリスクを減らすことに成功した。また、フロー型であるので、3)長時間の測定でも試料へのダメージを抑えられる改良が期待でき、試料の回収も可能となった。最も大きな改善点は電場強度の向上である。我々がこれまでに用いてきた電場セルでは、2枚のITOガラス電極(厚み:150 µm×2)で溶液層(厚み:300 µm)を挟んで最高電圧1500 Vをかけていた。したがって、最大電場強度は1500 V/600 µm=2.5 V/µmであった。一方、今回開発した電場セルでは、ガラス基板に直接溶液槽を作製しているため、電場強度は同じ印加電圧でも1500 V/300 µm=5.0 V/µmと単純に倍増させることができた。さらに、ショートのリスクを減らしたことから、印加電圧を1500 V以上に上げることが可能である。
このセルを用いて我々は金ナノロッド試料に外部電場を印加し、電場方向に配列させたことに対応する短軸のプラズモン吸収の増大と長軸のプラズモン吸収の減少を観測できた。今後、小角X線散乱測定に適用し、溶液槽の深さについて再検討し、さらなる改良・改善を目指していきたい。
図 製作したセル

4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.