利用報告書
課題番号 :S-19-MS-0023
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利用課題名(日本語) :キタエフ量子スピン液体物質へのキャリアドーピング
Program Title (English) :Carrier doping effect on a Kitaev spin-liquid candidate
利用者名(日本語) :橋本 顕一郎1),水上 雄太1),田中 桜平1),石原 滉大1),原澤 龍平1),須田 理行2),山本 浩史2)
Username (English) :K. Hashimoto1), Y. Mizukami1), O. Tanaka1), K. Ishihara1), R. Harasawa1), M. Suda2), H. Yamamoto2))
所属名(日本語) :1) 東京大学大学院新領域創成科学研究科, 2) 分子科学研究所
Affiliation (English) :1) Department of Advanced Materials Science, The University of Tokyo, 2) Institute for Molecular Science
1.概要(Summary )
磁性体中のスピンは、通常量子力学的な相互作用により低温で強磁性や反強磁性といった磁気的な長距離秩序を形成する。しかし、物質によっては絶対零度においてもスピンが秩序化せず、量子スピン液体と呼ばれる基底状態をとることがある。ごく最近、この量子スピン液体状態を厳密解として持つキタエフ模型が提唱され、この模型ではスピンが分裂した「マヨラナフェルミオン」が現れることから、大きな注目を集めている。この新しいマヨラナ粒子はトポロジカル量子計算への応用が期待されているため、現在その実験的検証が世界中で極めて重要な研究課題となっている。
そのような中、近年α-RuCl3がキタエフスピン液体の候補物質として注目されている。この物質では、キタエフスピン液体状態が実現している兆候を示す複数の実験結果が報告されているものの、およそ7 Kにおいて反強磁性相に相転移するため、熱揺らぎが十分に抑制される低温において、キタエフスピン液体状態に特徴的な低エネルギー励起を実験的に観察することが困難である。この反強磁性秩序を抑制するためには、試料に磁場や圧力を印加する必要があり、その点が実験的制約となっている。 そこで本研究では、α-RuCl3の単結晶試料の表面に対して、有機分子を用いたキャリアドーピングを行い、磁気秩序を制御・抑制することで、ゼロ磁場状態においてキタエフスピン液体状態を安定的に実現させ、分数量子化されたマヨラナ粒子の実験的検出を目指した。
2.実験(Experimental)
分子科学研究所の山本グループと共同で、フォトクロミック単分子膜を電界効果トランジスタ界面に組み込んだ光駆動型トラジスタを作成し、キタエフスピン液体候補物質であるα-RuCl3へのキャリアドーピングを試みた。具体的な方法としては、クリーンルームにおいて、スピンコーターを用いて、スピロピラン誘導体を試料表面に自己組織化させ、その後、紫外線照射によって光誘起双極子を誘起し、電界効果により試料表面にキャリアドーピングを試みた。その後、PPMSを用いることで、電気抵抗率測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
フォトクロミック型電界効果トランジスタにおいて、α-RuCl3の電気抵抗率測定を行ったものの、電気抵抗率の減少は1%程度しか観測されず、キャリアはほとんどドーピングされなかった。その原因として、試料表面のラフネスや酸化、劣化などの可能性が挙げられる。今後は、試料表面の処理方法を変えながら、キャリアドーピングを行う必要があると考える。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







