利用報告書

キノン部位を有する新規なD-A型分子を用いた機能性物質の結晶構造解析
藤原秀紀
大阪府立大学大学院理学系研究科

課題番号 :S-18-MS-1024
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :キノン部位を有する新規なD-A型分子を用いた機能性物質の結晶構造解析
Program Title (English) :Crystal strycture analyses of functional materials based on new D-A type
 molecules containing a quinone part
利用者名(日本語) :藤原秀紀
Username (English) :H. Fujiwara
所属名(日本語) :大阪府立大学大学院理学系研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science, Osaka Prefecture University

1.概要(Summary )
我々は磁場や光照射などの外部刺激に対し顕著な応答性を示す、磁性と伝導性・光物性の複合機能性の観点から興味が持たれる、新規な磁性伝導体の開発を行っている。そのような新規物質の開拓には、分子間相互作用を解析するための結晶構造解析が重要である。今回、キノン部位としてジケトピペラジンを用い、ドナー部位としてビスメチルチオTTFを導入したD-A型分子について単結晶を作製し、その構造について検討した。
2.実験(Experimental)
X線集光ミラーを備えた極微小結晶用単結晶X線回折装置(Rigaku社製 4176F07 CCD-3)を用いた回折測定を250K付近の温度領域で行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
キノン部位としてジケトピペラジンを用い、ドナー部位としてビスメチルチオTTFを導入したD-A型分子1BMT-TTFについて、CS2 / heptaneの二層系再結晶により黒色板状単結晶を作製し、構造解析を行った。図1にその結晶中での積層構造を示す。結晶系は単斜晶系に属し、空間群はC2 / cであり、ユニットセル中には結晶学的に独立な分子が1つ存在した。結晶中でジケトピペラジン部位とTTF部位が互いに分離した積層構造を構築したが、硫黄原子間最短距離は6.08 Åと遠く、TTF分子間の伝導パスを介した光伝導性の発現は期待できない構造であった。しかしながら、分子間においてNHの水素原子とカルボニル基の酸素原子の間に距離2.28 Åの短いH•••O接触が存在しており、b軸方向に水素結合を介して積層構造を構築していていることが明らかになった (NHの窒素原子とC=Oの酸素原子の距離は3.07 Å)。したがって、ジケトピペラジン骨格分子では水素結合ネットワークの構築が期待できると考えられる。

図1 1BMT-TTFの積層構造

4.その他・特記事項(Others)
本研究は科学研究費補助金(基盤研究(C)18K05264)により行われた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 福井詩乃, 松本悠希, 藤原秀紀, 第12回分子科学討論会, 2018年9月10-13日.
(2) 山口美奈代, 藤原秀紀, 第12回分子科学討論会, 2018年9月10-13日.
(3) 松本悠希, 酒巻大輔, 藤原秀紀, 日本化学会第99春季年会, 2019年3月16-19日.
(4) 西村友樹, 山口美奈代, 酒巻大輔, 藤原秀紀,日本化学会第99春季年会, 2019年3月16-19日.

6.関連特許(Patent)
なし

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