利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1010
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :キュリー・ワイスの法則に基づくフリーラジカル定量分析法の精確さ向上を目的とした高周波ESR測定
Program Title (English) :High frequency ESR measurement for improvement of accuracy on a quantitative free radical analysis based on Curie-Weiss law
利用者名(日本語) :松本信洋1)
Username (English) :N. Matsumoto1)a
所属名(日本語) :1) 産業技術総合研究所計量標準総合センター
Affiliation (English) :1) NMIJ、AIST
1.概要(Summary )
利用者は,キュリー・ワイスの法則と磁気モーメントの加算則、ESR基本方程式を組み合わせることにより、高純度粉末試料に含まれているフリーラジカル数(フリーラジカルとしての純度)を直接測定可能な新規定量分析法“有効磁気モーメント法”の研究に取り組んでいる。実験としては、SQUIDによる磁気モーメントの温度依存性測定、及び、電子スピン共鳴測定による g値測定を行う。これまでは,TEMPOL, TEMPO、および、安息香酸4-ヒドロキシTEMPO(4HTB)の高純度粉末のQバンドESR測定を試みてきた。その結果,室温のQバンドESRスペクトルの形状とキュリー・ワイスの法則に基づくフリーラジカル純度分析値との間に,定性的な相関がある事を見出した。本申請では,さらにこの研究を進展させるために,ESR 定量分析で使用される頻度が高い DPPH の高周波ESR測定を実施する。また、TEMPOおよび4HTBの液体He温度付近までのESR測定を実施する。
2.実験(Experimental)
・電子スピン共鳴装置Bruker E500、Bruker EMX
・SQUID Quantum Design MPMS-7 (with horizontal totator), MPMS-XL
3.結果と考察(Results and Discussion)
二つの試薬メーカーから購入した高純度DPPH粉末のQバンドESRスペクトルを測定した結果、片方のメーカーの試薬粉末において、不純物によるものと推定されるピークが検出された.現在、DPPHについて有効磁気モーメント法による純度分析を実施している最中であり、今後、両メーカーのDPPH粉末における純度分析値結果とQバンドESRスペクトル間の関連性の有無を調べる予定である。TEMPOと4HTB粉末については、液体He温度付近までのQバンドスペクトル測定を試みたが、飽和してしまい、公表できるスペクトルを得るには至らなかった。しかしながら、Xバンドでは10 K以上の良好なXバンドスペクトルを得た。4HTBは室温から10 Kまでローレンツ型に近いスぺクトルを示し、有効g値も一定である事が確認できた。また、TEMPOは50 K以下でガウス型に近いスぺクトルを示し、50 Kから10 Kまで温度低下と共に有効g値が約0.1%増加したものの、現状のSQUIDによる磁気モーメント測定値の不確かさと比較すると無視できる変化である。両物質ともに有効g値が室温から10 Kまで一定とみなせる事が確認できた事により、有効磁気モーメント法によるフリーラジカル純度分析値の相対拡張不確かさ(k=2)が1%まで向上した。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 松本信洋,ぶんせき,2016(2),(2016)p.p.63-67.
(2) 松本信洋,下坂拓哉,日本分析化学会第65年会, 平成28年9月14日
(3) 松本信洋,下坂拓哉,電子スピンサイエンス学会(SEST2016), 平成28年11月11日
(4) 松本信洋,分子研研究会「物質および生体機能の起源にせまる先端的電子スピン分光計測」, 平成29年12月7日
(5) 松本信洋, 2016年度計量標準総合センター成果発表会ポスターセッション, 平成29年1月26日
6.関連特許(Patent)
なし







