利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1046
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :キラル有機伝導体の極低温X線構造解析とESR測定
Program Title (English) :Low temperature X-ray analyses and ESR measurements of chiral organic conductors
利用者名(日本語) :圷 広樹1)
Username (English) :H. Akutsu1)
所属名(日本語) :1) 大阪大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science、Osaka University
1.概要(Summary )
我々が2008年に報告した ́ ́-(BEDT-TTF)2PROXYL-CONHCH2SO3はラセミ体(Rac-1)で、これと同形のS-体の作成に成功しました。伝導度測定の結果(図1)、S-1、Rac-1とも緩やかな金属-絶縁体転移を示し、転移温度はほぼ同じでした(Cooling: 220 K, Heating: 280 K)。一方、30 Kの抵抗値は S-2 の方がRac-2 よりも3桁近く大きく、低温では電子状態が異なるようです。低温での電子状態の解明のため低温X線構造解析とESR測定を分子科学研究所にて行いました。
2.実験(Experimental)
分子科学研究所機器センターの単結晶X線回折装置 微小結晶用Rigaku HyPix-AFCにて、最低温(29, 28 K)でS-1およびRac-1のX線構造解析を行いました。東工大森健彦先生開発のバンド計算プログラムを用いバンド構造を計算しました。ESR測定は単結晶を用い、Bruker E500にて3-250 Kで行いました。
3.結果と考察(Results and Discussion)
S-1およびRac-1の29, 28 Kでの測定結果を室温および106 Kでの阪大での測定結果と比較しますと、格子定数に大きな変化はなく、相転移は見られませんでした。バンド計算の結果、室温および106 Kでは両者はほぼ同じバンド分散、Fermi面を有していました。両塩は106 Kでは実際は半導体なので、電荷分離など強相関が引き起こす絶縁体であることになります。しかし、29, 28 Kでは電子構造は大きく異なっていました(図2)。
S-体では106 Kとほぼ同じFermi面が計算されるのに対して、ラセミ体ではFermi面がなく、バンド絶縁体になることがわかりました。つまり、106 Kから28 Kの間で絶縁体-絶縁体転移を起こしていることになります。それでは、S-体の絶縁状態はどのような状態なのでしょうか?キラリティは関係しているのでしょうか?この点を明らかにするために続いてESR測定を行いましたが、ラジカルのスピンだけが大きく見え、またピークは複雑で、伝導電子の状態は今の所明らかにできていません。今後さらにS-体の電子状態を解明していきたいです。
4.その他・特記事項(Others)
本測定では、分子科学研究所 機器センター 岡野芳則博士、藤原基靖博士、兵藤由美子博士に大変お世話になりました。この場をお借りして感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) A. Kohno, H. Akutsu, Y. Nakazawa, 第13回分子科学討論会, 令和元年9月19日
6.関連特許(Patent)
なし







