利用報告書
課題番号 :S-15-NI-45
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :グラフェン膜の転写、合成と評価
Program Title (English) :Characterization of graphene synthesis and transfer process
利用者名(日本語) :岡田健1)
Username (English) :T. Okada1)
所属名(日本語) :1) 東北大学流体科学研究所
Affiliation (English) :1) Institute of Fluid Science, Tohoku University
1.概要(Summary )
グラフェンは次世代半導体材料として注目されている材料である。現在のグラフェン研究の課題は既存の半導体プロセスに適合可能な大面積化の合成と、任意の基板上に転写するプロセスの最適化とされている。そこで申請課題では、特に転写プロセスに着目し、その最適化検討を行った。プロセスの各段階を最適化することで残留物質のないグラフェン転写プロセスを見出すことに成功した。また電気化学活性を示し、酸素還元反応における触媒効果を示した。
2.実験(Experimental)
グラフェン・カーボンナノチューブ合成装置を使用し、大面積グラフェン膜の合成を行った。また、所望の基板を用いたグラフェン膜転写プロセスの最適化検討を行った。グラフェンの合成は銅箔を用いた化学気相蒸着法によって行った。またグラフェンの転写プロセスにおいては、まずグラフェン膜をポリマーでコーティングし、塩化鉄溶液を用いて銅箔を化学的に除去した。この除去プロセスの処理時間、溶液濃度の最適化を行った。さらに基板に転写する際に残留試薬除去するために、硝酸溶液を用いた検討を行った。さらに、ポリマーの除去プロセスの検討を行った。まず、アセトン溶液で十分な時間をかけポリマーを溶解した。その後、アルゴン水素雰囲気下において400℃のアニール処理を行った。上記の転写プロセスは原子間力顕微鏡(AFM)で評価した。さらにグラフェンに窒素をドープし、電気化学的活性の評価を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に転写プロセス後のラマンスペクトルを示す。グラフェンに特徴的なGバンド、2Dバンドピークが観察された。線幅が狭く、高品質なグラフェン形成に成功していることがわかる。
また転写プロセス最適化における、アルゴン水素アニールによって残留物の除去が可能であることも明らかになった。アニール中、欠陥のない高品質のグラフェンは燃焼せず、ポリマー由来の残留炭素のみを燃焼させたものと推測できる。
以上のようにグラフェン形成と転写プロセスの最適化を目的に検討を行い、非常に高品質のグラフェンを任意の基板に転写する技術を確立した。さらにこうして得られたグラフェンに窒素をドープし、電気化学活性を調査した結果、酸素還元反応が現れることが明らかになった。
図1:グラフェンのラマンスペクトル
4.その他・特記事項(Others)
該当なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
Investigation of carbon-nitrogen bonding state in graphene on catalytic activity, T. Okada, K. Y. Inoue, T. Matsue, G. Kalita, M. Tanemura, M. Meyyappan, and S. Samukawa, 17th International conference on the science and application of nanotubes(2016年8月発表予定)
6.関連特許(Patent)
該当無し。







