利用報告書
課題番号 :S-20-NI-0016
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :ケイ酸塩ガラスの57Fe メスバウアー分光測定
Program Title (English) :57Fe Mössbauer spectroscopy measurement of silicate glasses
利用者名(日本語) :助永壮平1), 篠田弘造1),柴田浩幸1)
Username (English) :S. Sukenaga1), K. Shinoda1), H. Shibata1)
所属名(日本語) :1) 東北大学多元物質科学研究所
Affiliation (English) :1) IMRAM、Tohoku University
1.概要(Summary )
ケイ酸塩をはじめとする金属製精錬関連酸化物(例:スラグ)の多くは鉄イオンを含有し、鉄イオンの酸化状態や局所構造(配位数など)が酸化物融体やガラス、結晶相の物理化学的性質に大きく影響する。本研究では、金属製錬スラグの基本組成であるアルカリ土類鉄ケイ酸塩を対象に溶融雰囲気とアルカリ土類金属イオンの種類が鉄イオンの酸化状態(Fe2+,Fe3+の構成比)や鉄イオンの局所構造に与える影響を系統的に調査することを目的としている。2020年度は、アルカリ土類陽イオンとしてカルシウムまたはバリウムイオンを含む系を対象に調査を行なった。
2.実験(Experimental)
試料の初期組成を30 mol% RO – 60 mol% SiO2 – 10 mol% Fe2O3(R = CaまたはBa)とした。試薬粉末を所定の割合で混合し、1773 K大気中(Ptるつぼ)にて15 min溶融した。溶融後の試料を銅板上で急冷した。得られたガラス7 gをPtるつぼに入れ、1773 Kの大気雰囲気中で5時間溶融した。その後、試料融液を銅板で挟み込むことで急冷し、ガラス状態の試料を得た。得られた試料中の鉄の酸化状態をメスバウアー分光分析に用いた。メスバウア分光装置を使用し、粉末状のガラス試料を対象に透過法により室温下で測定を行なった。また、同サンプルのFe-K端X線吸収スペクトル測定を行い、試料中のFe原子近傍の構造を評価した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
本研究で作製したカルシウムイオンまたはバリウムイオンを含むガラス試料の57Feメスバウア分光分析を行なった。いずれアルカリ土類イオンを含む試料でも全鉄量に対するFe3+の割合(Fe3+/t-Fe)は、おおよそ0.8程度であった。同試料のFe-K端X線吸収スペクトルから求めたFe原子近傍の動径分布関数より、Fe-O間の相関距離はカルシウムを含む試料の方がバリウムイオンを含む試料よりも長いことが見出された。これはバリウムを含む試料中のFe3+の方がカルシウム系に比較して配位数が低い(酸素との結合が強い)傾向があることを示唆している。今後、同系ガラスや融体の物性との相関について、調査を行う予定である。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は、科学研究費補助金(19K05106)の助成を受けたものである。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) M. De Colle, S. Sukenaga, K. Mibu, Y. Kato, H. Matsunaga, P. G., Jönsson, A. Karasev, and H. Shibata, Journal of Sustainable Metallurgy, in press.
(2)助永壮平,古賀拓郎,篠田弘造,柴田浩幸 日本鉄鋼協会第179回春季講演大会, 令和2年3月19日
(3)助永壮平,Mai Paolo,川西咲子,柴田浩幸 資源・素材2020(仙台), 令和2年9月8日
6.関連特許(Patent)
なし