利用報告書

ゲート電極に膜タンパク受容体を固定化した毒性物質センサーの開発
石井裕太1), 黒田俊一2)(1) 大阪大学大学院生命機能研究科, 2) 大阪大学産業科学研究所)

課題番号 :S-20-OS-0044 
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ゲート電極に膜タンパク受容体を固定化した毒性物質センサーの開発
Program Title (English) :Development of a Toxicant Sensor with Membrane Protein Receptor Immobilized on the gate
利用者名(日本語) :石井裕太1), 黒田俊一2)
Username (English) :Y. Ishii1), S. Kuroda2)
所属名(日本語) :1) 大阪大学大学院生命機能研究科, 2) 大阪大学産業科学研究所
Affiliation (English) :1) Graduate School of Frontier Biosciences, Osaka University,
2) The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka University

1.概要(Summary )
膜タンパク質を用いたバイオセンサーは、従来の化学センサーでは検出困難であったバイオマーカーや匂い物質などの生体分子を高感度に検出できると期待され、その実現に向けた研究が行われている。本研究では、工学的に扱いやすい性質を持ちつつも今までバイオセンサーのセンシング分子として使用されてこなかった、多剤排出トランスポーター(毒性物質の受容体)の1つであるEmrEを固定化したFETセンサーを構築することで、将来の様々な膜タンパク質を用いたFETセンサー開発のための基礎検討を行った。

2.実験(Experimental)
【使用装置】RFマグネトロンスパッタ装置
【実験方法】フレキシブルIS-FETセンサーのゲート絶縁膜上にスパッタにより金ゲート電極を形成した。
作製した金ゲートFETセンサーを、システイン変異を導入したナノディスクとEmrEの複合体溶液に浸漬してEmrEを固定化し、EmrEを固定化したバイオセンサーを構築した。それを用いて、EmrEの代表的なリガンドであるテトラフェニルホスホニウム(TPP)をゲート電位変化により検出する実験を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
ポテンショスタットと電圧計を用いて、作製したEmrE固定化FETセンサーのゲート電位の、TPP濃度依存性を計測した。ネガティブコントロールとしてリガンド結合活性を持たないEmrEの機能欠失変異体E14Cを同様の方法で固定化したFETを用意し、TPPの希釈系列0pM~100nMを用いて段階的にTPP濃度を上昇させながら各センサーのゲート電位を測定した。その結果を以下の図に示す。

機能欠失変異体E14Cを固定化したFETではTPP濃度依存的なゲート電位上昇は見られなかったのに対し、EmrEを固定化したFETでは陽イオンであるTPPの濃度依存的にゲート電位が上昇した。本結果は、EmrEのリガンド結合を初めてリアルタイムかつ直接的に検出したものであるが、実験系が非常に不安定であり、本結果は1度しか得ることが出来なかった。成膜された金電極の静電遮蔽によってリガンドの電場がチャネルに到達していないことが結果の不安定性の原因として考えられるため、今後は金電極を島状にして結果が改善するか検討する必要がある。

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.