利用報告書

シアノバクテリアの環境耐性に関与する遺伝子の同定
外川梓, 安部智子

課題番号                :S-20-NM-0049

利用形態               :技術代行

利用課題名(日本語)    :シアノバクテリアの環境耐性に関与する遺伝子の同定

Program Title (English) :Identification of genes involved in environmental tolerance in a terrestrial cyanobacterium, Nostoc sp. HK-01

利用者名(日本語)      :外川梓, 安部智子

Username (English)     :A. Togawa, T. Abe

所属名(日本語)        :東京電機大学理工学部理工学科生命理工学系

Affiliation (English)  :Division of Life Science and Engineering, School of Science and Engineering, Tokyo Denki University

 

 

1.概要(Summary)

ネンジュモと呼ばれるNostoc属は海水や淡水、陸上に生息するシアノバクテリアの一種であり、陸棲の種は乾燥した状態で長期間生存可能であることが知られている。本研究に用いた菌株 Nostoc sp. HK-011) は、特に乾燥に強い株として陸上から単離された株であり、徐々に乾燥していく過程で獲得する乾燥耐性機構が存在すると考えられる。本研究は、Nostoc sp. HK-01 が乾燥過程で獲得する乾燥耐性に関与するタンパク質(遺伝子)を明らかにすることを目的として行った。

 

2.実験(Experimental)

【利用した主な装置】

LC-MS/MS (Q-Exactive)

 

【実験方法】

Nostoc sp. HK-01をBG-11液体培地で2週間振とう培養した後、1.5 mlチューブに菌体を採取して培地を取り除き、デシケーター内(20-27℃、湿度20-30%、遮光)で乾燥させた。乾燥開始から経時的に菌体を採取した。採取した菌体を超音波破砕で破砕した。その後、22000 × g で30分間の遠心分離により可溶性画分と不溶性画分に分離し、それぞれ冷凍保存した。可溶性画分は、遠心エバポレーターを用いて濃縮した。

経時的に採取した可溶性画分と不溶性画分それぞれをSDS-PAGEに供した。泳動後に銀染色キットで銀染色を行い、それぞれのレーンのバンドを比較することで、経時的なタンパク質発現の変化を観察した。SDS-PAGE上で特異的な増減が見られたバンドをゲルから切り出し、In gel digestion 法を用いてトリプシンによるペプチド断片化を行った後、LC-MS/MS(Q-Exactive)に供した。Proteome discover 2.0を用いてデータ解析を行い、目的のタンパク質を同定した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

乾燥開始から経時的にサンプリングした菌体の可溶性画分あるいは不溶性画分のタンパク質をSDS-PAGEに供して比較した結果、乾燥過程で特異的に量が増減するタンパク質のバンドが可溶性画分と不溶性画分どちらでもいくつか確認された。乾燥が進行し、細胞内の水分量が減少するにつれて量が増加したいくつかのタンパク質について、LC-MS/MS(Q-Exactive)による分析を行なった結果、その多くは機能未知のタンパク質であった。

 

4.その他・特記事項(Others)

参考文献 1)Kimura, S. et al. Biological Sciences in Space, 28, 12-18. (2015)

LC-MS/MS(Q-Exactive)を使用した分析に関して、分子・物質合成プラットフォーム 服部晋也博士にご支援をいただきました。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし

 

6.関連特許(Patent)

なし

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