利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1023
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :シクロデキストリン類と薬物の包接複合体の構造解析
Program Title (English) :Single crystal structure analysis of cyclodextrin-drug inclusion complexes
利用者名(日本語) :小川法子
Username (English) :N. Ogawa
所属名(日本語) :愛知学院大学 薬学部 製剤学講座
Affiliation (English) :Department of Pharmaceutical Engineering, School of Pharmacy,
Aichi Gakuin University
1.概要(Summary )
シクロデキストリン (CD) 類はD-glucoseが環状に結合した環状糖類であり、glucose単位6, 7, 8より構成される-, -, -CD等が知られている。CD類は疎水性の空洞を有し、この空洞に薬物を包接することで薬物の安定性向上や溶解性改善などを可能とすることから、薬物をCD類に包接することで得られる利点は多い。本研究では、包接複合体におけるCD類と薬物の構造を明らかにすることで包接メカニズムを解明することを目的として、単結晶X線回折装置を用いてCD類の薬物包接複合体の結晶構造解析を試みた。
2.実験(Experimental)
CD類(-, -, -CD) と複数の化合物の包接複合体結晶を調製し、作製に成功した複数の結晶について、単結晶X線回折測定を試みた。なお、ゲスト化合物として、R(+)-リポ酸ならびにコエンザイムQ10 (CoQ10) を構成するイソプレン構造を有する複数の化合物を用い、CD類との包接複合体の単結晶は所属機関にて作製した。単結晶を作製した後、分子科学研究所に持参し、単結晶X線回折装置にて回折パターンを測定し構造解析を行った。単結晶X線回折装置は、Rigaku MERCURY CCD-1・R-AXIS IV及びRigaku MERCURY CCD-2、また、微小結晶Rigaku MERCURY CCD-3を利用した。結晶を顕微鏡にて確認し、クライオループにて装置に設置し、窒素噴霧低温下で測定を行った。解析は構造解析プログラムCrystalStructureTM (株式会社リガク) およびSHELXを内蔵した結晶構造解析ソフトであるYadokari-XG 2009, Yadokari-XG 1, 2)を用いて行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
前年度までの測定および構造解析の結果、各種CD類とR(+)-リポ酸の包接複合体の初期構造を得ており、リポ酸はCD類と包接複合体を形成することを確認している。これらの複合体では、包接されたR(+)-リポ酸の温度因子が大きいことから、R(+)-リポ酸の分子運動が大きくdisorderで存在することが推察される。本年度は、ゲスト化合物の構造決定を目的として、さらなる測定と構造の精密化を行った。今後、解析結果に計算化学による結果を併せて構造を検討する予定である。また、CoQ10を構成するイソプレン構造を有する複数の化合物と-CDの包接複合体結晶の単結晶X線構造解析を行った。複数の化合物について包接複合体の単結晶を数種の方法で作製し、単結晶X線回折測定と解析を行ったが、いずれも初期構造を得るに至っていない。今後、さらに単結晶の作製と測定・解析を重ねる予定である。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本利用にあたり、分子科学研究所 機器センターの皆様に支援を頂きました。また、本課題の実施にあたり、分子科学研究所 岡野芳則先生、藤原基靖先生に測定方法についてご指導を頂きました。厚く御礼申し上げます。
参考文献:1) 脇田啓二, Yadokari-XG, 単結晶構造解析ソフトウェア (2001). 2) 甲千寿子, 秋根茂久, 根本隆, 權垠Yadokari-XG 2009, 日本結晶学会誌, 51, 218-224 (2009).
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
学会発表:1) 青木千秋, 小川法子他, R-リポ酸とシクロデキストリン類の包接複合体の単結晶X線構造解析, 第31回日本薬剤学会, 岐阜, 2016年5月19日 2)小川法子他, イソプレン構造を有する化合物の-シクロデキストリンによる包接複合体化とその構造解析, 第33回シクロデキストリンシンポジウム, 香川, 2016年9月9日
6.関連特許(Patent)
なし。







