利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1017
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :シクロデキストリン類と薬物の包接複合体の構造解析
Program Title (English) :Single crystal structure analysis of cyclodextrin-drug inclusion complexes
利用者名(日本語) :小川法子
Username (English) :N. Ogawa
所属名(日本語) :愛知学院大学 薬学部 製剤学講座
Affiliation (English) :Department of Pharmaceutical Engineering, School of Pharmacy,
Aichi Gakuin University
1.概要(Summary )
シクロデキストリン (CD) 類はグルコピラノース単位から形成される-1,4結合の環状糖類であり、構成されるグルコース単位の数により、-CD (6量体)、-CD (7量体)、-CD (8量体)に分類される。CD類は疎水性の空洞を有し、この空洞内に薬物を取り込む(包接)することでその薬物の安定性向上や溶解性改善などを可能とすることから、薬物をCD類に包接することで得られる利点は多い。本研究では、包接複合体におけるCD類と薬物の構造を明らかにすることで包接メカニズムを解明することを目的として、単結晶X線回折装置を用いてCD類の薬物包接複合体の結晶構造解析を試みた。
2.実験(Experimental)
CD類と複数の化合物の包接複合体結晶を調製し、作製に成功した複数の結晶について、単結晶X線回折測定を試みた。本年度は昨年度に引き続き、より精度の高い構造を得るために、これまでに初期構造を得ている包接複合体結晶について結晶作製法を改良し、さらに測定時のX線の露光時間等条件を変更して再測定を行った。ゲスト化合物として、R(+)-リポ酸ならびにコエンザイムQ10 (CoQ10) を構成するイソプレン構造を有する複数の化合物を用い、単結晶を作製した。CD類との包接複合体の単結晶は所属機関にて作製し、分子科学研究所に持参し、単結晶X線回折装置にて回折パターンを測定し構造解析を行った。単結晶X線回折装置は、Rigaku MERCURY CCD-1・R-AXIS IV及びRigaku MERCURY CCD-2、また、極微小結晶用単結晶X線回折装置 (Rigaku社製 HyPix-AFC)を利用した。結晶を顕微鏡にて確認し、クライオループにて装置に設置し、窒素噴霧低温下で測定を行った。解析は構造解析プログラムCrystalStructureTM 、OLEX2 (株式会社リガク) およびSHELXを内蔵した結晶構造解析ソフトであるYadokari-XG 2009, Yadokari-XG 1, 2)を用いて行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
単結晶X線回折測定を行った結果、露光時間を調整することで、前年度までに得られていた結晶構造よりも精度の高い結果を得ることができたが、より長い露光時間が求められることが分かった。今後、条件を検討しながらさらなる測定を重ね、cif登録ならびに論文発表する予定である。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本利用にあたり、分子科学研究所 機器センターの皆様に支援を頂きました。また、本課題の実施にあたり、分子科学研究所 岡野芳則先生、藤原基靖先生に単結晶X線回折測定方法についてご指導を頂きました。厚く御礼申し上げます。
参考文献:1) 脇田啓二, Yadokari-XG, 単結晶構造解析ソフトウェア (2001). 2) 甲千寿子, 秋根茂久, 根本隆, 權垠Yadokari-XG 2009, 日本結晶学会誌, 51, 218-224 (2009).
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
学会発表:1) シクロデキストリンによる包接複合体化とその構造解析, 粉体工学会中部談話会, 愛知県, 2019年9月8日
6.関連特許(Patent)
なし。