利用報告書

シクロデキストリン類と薬物の包接複合体の構造解析
小川法子(愛知学院大学 薬学部 製剤学講座)

課題番号 :S-20-MS-1031
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :シクロデキストリン類と薬物の包接複合体の構造解析
Program Title (English) :Single crystal structure analysis of cyclodextrin-drug inclusion complexes
利用者名(日本語) :小川法子
Username (English) :N. Ogawa
所属名(日本語) :愛知学院大学 薬学部 製剤学講座
Affiliation (English) :Department of Pharmaceutical Engineering, School of Pharmacy,
Aichi Gakuin University

1.概要(Summary )
シクロデキストリン (CD)類はD-glucoseが環状に結合した環状糖類であり、疎水性の空洞を有する。この空洞に薬物を取り込む(包接する)ことで、CD類は薬物の安定性向上や溶解性の改善等を可能とすることから、薬物をCD類に包接させることで得られる利点は多い。一般に、薬物とCD類の相互作用は、両者の化学量論比の算出や、核磁気共鳴スペクトル法や赤外吸収スペクトル法などの複数の機器を用いた構造解析によって、類推される。本研究では、CD類と薬物の包接複合体におけるCD類と薬物の配座を明らかにすることで、包接メカニズムを解明することを目的として、単結晶X線回折装置を用いてCD類の薬物包接複合体の結晶構造解析を試みた。

2.実験(Experimental)
CD類と複数の化合物から成る包接複合体結晶の調製を検討し、作製に成功した結晶について、単結晶X線回折測定を試みた。CD類との包接複合体の単結晶は所属機関にて作製し、分子科学研究所にて単結晶X線回折装置を用いて回折パターンを測定し構造解析を行った。単結晶X線回折装置は、Rigaku MERCURY CCD-1・R-AXIS IV及びRigaku MERCURY CCD-2、また、極微小結晶用単結晶X線回折装置 (Rigaku社製 HyPix-AFC)を利用した。結晶を顕微鏡にて確認し、クライオループにて装置に設置し、窒素噴霧低温下で測定を行った。解析は構造解析プログラムCrystalStructureTM 、OLEX2 (株式会社リガク)を用いて行った。より精度の高い構造を得るために、測定時のX線の露光時間を長くした長時間測定により、高角の反射を得ることを試みた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
単結晶X線回折測定を行った結果、露光時間を調整することで、これまでよりも精度の高い結果を得ることができたが、構造を決定するために必要となるような十分な反射を得ることはできなかった。したがって、露光時間のさらなる調整に加え、X線の線源の異なる装置も使用することが求められると考える。今後、露光時間ならびに使用装置を検討しながら、さらなる測定を重ね、cif登録ならびに論文発表する予定である。

4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本利用にあたり、分子科学研究所 機器センターの皆様に支援を頂きました。また、本課題の実施にあたり、分子科学研究所 岡野芳則先生、藤原基靖先生に単結晶X線回折測定方法についてご指導を頂きました。厚く御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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