利用報告書

シッフ塩基金属錯体と種々の複合系の光渦誘起分子配向
高瀬雅浩、中鳥博幸、八木汐海、相澤洋紀, 秋津貴城
東京理科大学理学部

課題番号 :S-16-MS-1084
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :シッフ塩基金属錯体と種々の複合系の光渦誘起分子配向
Program Title (English) :Optical vortex induced orientation of Schiff base complexes in hybrid systems
利用者名(日本語) :高瀬雅浩、中鳥博幸、八木汐海、相澤洋紀, 秋津貴城
Username (English) :M. Takase, H. Nakatori, S. Yagi, H. Aizawa, T. Akitsu
所属名(日本語) :東京理科大学理学部
Affiliation (English) :Faculty of Science, Tokyo University of Science

1.概要(Summary )
高分子膜中に分散させた金属錯体分子を、直線偏光、円偏光、UVSORの光渦等の光を用いて配向制御し、その配向状態や電子状態を解明することを目的として研究を行っている。例えば、複核亜鉛(II)錯体やメチルオレンジ(MO)を分散したPVAポリマー膜複合材料について、直線偏光、円偏光、そして光渦UV照射後の諸変化を、CDスペクトルを用いて調査してきた。
今回はまず、光渦照射が及ぼすPVAへの影響を詳しく調査することで、金属錯体分子を複合した際の光渦の影響の差分の情報を得たい。その後、金属錯体分子を光渦で配向させることを試みる。具体的には、前回はPVAキャストフィルムに光渦照射を行い、照射前後のCDスペクトルを測定することで光渦のPVAへの影響を調査したが、それが機械的性質もしくは化学的性質の影響によるものなのかが判断できなかった。そのため、今回は、PVAキャストフィルムの比較対象として、PVA水溶液に光渦を照射し、照射前後のCDスペクトルを測定することで、光渦が及ぼすPVAの機械的性質への影響を除外し、光学的性質を抽出することを試みる。次に、金属錯体分子を複合させた系においてもPVA水溶液を用いることで、機械的効果を除外し、正のコットン効果の抑制についての知見を詳しく調査する。

2.実験(Experimental)
重量比率でPVA:水 = 1:15の水溶液を調製し、CDスペクトルを測定する。その後、光渦照射後のCDスペクトルを測定し、その差分スペクトルから光渦が及ぼすPVAの化学的性質への影響について考察する。続けて、PVA中に錯体が存在する中で、光渦を照射した場合、正のコットン効果が一部の波長で抑制される現象を解明するため、上記のPVAと同濃度のPVA溶液に錯体を分散させ、光渦の照射前後におけるCDスペクトルの測定を行った。JASCO J-720WIを使用。

3.結果と考察(Results and Discussion)
PVA膜中のZn(II)錯体分子が光渦照射によりマクロなキラル秩序を形成するかを確かめるため、複合膜に光渦を照射し、その前後についてCD測定を行う。照射する光渦の波長については極大吸収の二分の一の波長(380 nm)を選択した。一連の対照実験も考慮した。
Zn(II)錯体を含むPVAキャスト膜においても、380 nmの光渦を照射後似たようなCDピークの変化が確認できたことから、光渦のPVA膜の歪みへの影響がPVA内部の分子を介して発現することが示唆された。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)高瀬雅浩、中鳥博幸、森脇健司、相澤洋紀、秋津貴城、加藤政博、UVSORシンポジウム2016、平成28年10月29日

6.関連特許(Patent)
なし

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