利用報告書

シリカ/アパタイト複合粒子のシリケートイオンとリン酸イオンの存在状態の解明
山田 伊織1)、 山田 翔太1)、 多賀谷 基博1)
1) 国立大学法人 長岡技術科学大学 大学院工学研究科

課題番号                  : S-19-NU-0006

利用形態                  : 技術代行

利用課題名(日本語)       : シリカ/アパタイト複合粒子のシリケートイオンとリン酸イオンの存在状態の解明

Program Title (English)       : Investigation of Silicate Ion State in Silica/Apatite Composite Particles

利用者名(日本語)      : 山田 伊織1)、 山田 翔太1)多賀谷 基博1)

Username (English)         : I. Yamada1)、 S. Yamada1)M. Tagaya1)

所属名(日本語)        : 1) 国立大学法人 長岡技術科学大学 大学院工学研究科

Affiliation (English)           : 1) Graduate School of Engineering、 Nagaoka University of Technology

 

 

1.概要(Summary

新規医療応用を目指した生体安全性の高いリン酸八カルシウム (OCP) の機能化のためには、金属イオンドープや有機修飾が考えられる。例えば希土類イオンをドープすることで発光特性を付与することができる。また、OCP中に存在するリン酸水素はジカルボン酸イオンと置換することで有機修飾が可能であり、その存在状態は31P-NMRによって評価できる。

本研究では、新規に合成したEu (III) イオン (Eu3+)ドープOCP (OCP:Eu) とEu3+ドープコハク酸イオン置換OCP (Suc-OCP:Eu) の構造と発光特性を評価・比較し、層間構造が与える発光特性への影響を考察した。

 

2.実験(Experimental

OCP:Euは、Eu3+をCaに対して1–10 mol%になるように酢酸バッファー (0.1 M) 中に溶解させ、次いで、リン酸三カルシウムを添加して50℃・3時間の加水分解を施して合成した。他方、Suc-OCP:Euは、酢酸バッファー (0.1 M) と酢酸ナトリウム (1.0 M) の混合溶液中でEu3+とコハク酸を溶解させ、その後はOCP:Euと同様に合成した。析出物を超純水で洗浄して乾燥した。試料名は、Eu3+の仕込み濃度を添えて、OCP:Eu-X (X = 110)、及び、Suc-OCP:Eu-X (X = 110) と表記した。評価は、XRF、XRD、FT-IR、固体31P-NMR、蛍光 (PL) スペクトル、内部量子効率 (ηint) により行った。NMR装置はBruker AVANCE300Wbsを用い、DD/MAS法、共鳴周波数121.50 MHz、パルス幅4.0 μs、待ち時間20 s、積算回数1000 回、標準試料 (Reference) はammonium dihydrogen phosphate(1.02 ppm)で測定を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion

XRF結果から、Eu含有モル濃度は仕込みと凡そ一致した。Fig. 1のXRDから、合成した試料はOCP相であり、OCP:Eu系のd100値は1.87‒1.88 nm、Suc-OCP:Eu系のd100値は2.14‒2.16 nmで、コハク酸修飾によりd100値が増大したことが確認された。また、Suc- OCP:Eu系では、XRF結果から、C濃度の増加とP濃度の減少がみられ、FT-IR結果から、層間のリン酸水素 (P5) 由来の吸収帯強度が減少してカルボン酸イオン由来の吸収帯が発現した。さらに、固体31P-NMR (Fig. 2) の結果から、OCP:Eu系では-0.3 ppm付近にP3、P5、P6、2.0 ppmにP2、3.2 ppmにP1、3.6 ppmにP4に帰属されるピークが観測された。Suc-OCP:Eu系では、-1.2 ppmにリン酸水素 (Pb)、-0.1 ppmにリン酸 (Pa) 、2.2 ppmにP2、3.3 ppmにP1、3.7 ppmにP4に帰属されるピークが観測された。-0.3 ppm付近のOCPの水和層中に存在するP3、P5、P6に帰属されるピークの形状がOCP:Eu系とSuc-OCP:Eu系で大きく異なっており、Suc-OCP:Eu系ではPaとPbの2つのピークに分裂していることが明らかとなった。これは水和層中のリン酸水素P5がコハ

 

Fig. 1.  XRD patterns of (a) OCP:Eu and (b) Suc-OCP:Eu. All the plane indexes were attributed to a single phase of (•) OCP (ICDD No.: 01-074-1301) .

Fig. 2.  31P solid state NMR spectra of the (a) OCP:Eu, (b) Suc-OCP:Eu and (c) attribution of the phosphorus in OCP unit cell.

 

ク酸イオンに置換されたことで、水和層中の結合状態が変化し、リン酸とリン酸水素の存在状態に変化が生じた結果である。一方、Euの濃度の増加に伴うケミカルシフトの変化はなく、OCPの構造を維持したままEu3+とCa2+が置換し、コハク酸イオンがOCP層間のリン酸水素イオンと置換していると考えられた。

PLスペクトル (Fig. 3 (a), (b)) から、Eu3+由来の赤色発光が観測され、5D07F2遷移の5D07F1遷移に対する積分強度比から、Suc-OCP:Eu系ではOCP:Eu系よりもEu3+周囲の対称性が低いことが示唆された。また、蛍光強度 (5D07F2遷移) (Fig. 3 (c)) は、Eu濃度増加に伴って増大し、Suc-OCP:Eu系がOCP:Eu系に比べて高く、Euの仕込み濃度が10 mol%でも濃度消光が抑制されていると考えられた。さらに、ηint (Fig. 3 (d)) からは、両系ともにEu量に伴って増大し、Suc-OCP:Eu系がより高いことがわかる。これらの結果から、OCPの層状構造がEuの濃度消光を抑制していると考えられた。また、Eu3+の対称性が低下して、f-f遷移が許容され、さらには、コハク酸修飾により層間距離が増大したことによって、Eu同士間およびEu-消光剤間の距離が増大し、濃度消光と消光剤によるエネルギー失活が低減され、発光特性が向上したと推察している。

Fig. 3.  PL spectra of (a) OCP:Eu and (b) Suc-OCP:Eu under the excitation wavelength at 395 nm, and (c) PL peak area intensity and (d) ηint (550–750 nm).

 

4.その他・特記事項(Others

支援者名: 坂口 佳充・林 育生 (所属機関・部署: 名古屋大学ナノテクノロジープラットフォーム)

本研究の一部は、文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム課題として名古屋大学ナノテクノロジープラットフォーム の支援を受けて実施されました。固体NMRの測定・評価に深く感謝いたします。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation

1.山田伊織,多賀谷基博「層状リン酸八カルシウムへのEu(III)イオン置換とコハク酸修飾の両立」[口頭発表, 発表番号:Y-9] 第28回無機リン化学討論会,2019年9月19,20日(山梨大学甲府キャンパス大村智記念学術館)

 

6.関連特許(Patent

なし。

 

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