利用報告書

スピロ型ビスヒドロキサマート塩およびキラルチオキサンチリウム塩の合成と不斉触媒反応への応用
神山祐輔,星野雄二郎(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

課題番号 :S-20-MS-0010
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :スピロ型ビスヒドロキサマート塩およびキラルチオキサンチリウム塩の合成と不斉触媒反応への応用
Program Title (English) :Synthesis of spiro bishydroxamates and chiral thioxanthylium salts toward development of catalytic asymmetric synthesis
利用者名(日本語) :神山 祐輔, 星野 雄二郎
Username (English) :Y. Kamiyama, Y. Hoshino
所属名(日本語) :横浜国立大学大学院環境情報研究院
Affiliation (English) :Graduate School of Environment and Information Sciences, Yokohama National University

1.概要(Summary )
不斉触媒反応は光学活性体を効率的に合成する手法として極めて重要である。触媒の絶妙な微調整によって反応の選択性を劇的に変化させることが可能であり、触媒設計のさらなる深化が期待されている。環化反応は位置選択性および立体選択性の制御がしばしば必要であり、それらを高度に制御した触媒的環化反応の開発は重要な研究テーマの一つである。近年ユニークな中心性キラリティーとして堅固な構造を有するスピロ環骨格の研究が活発になされている。ヒドロキサム酸やリン酸は中程度の酸性のためその共役塩基はカチオンとの相互作用が強く、塩の安定化効果に大きく寄与する。この効果は触媒活性中心であるカチオン周りの堅固な不斉環境の構築に有用である。
本研究では入手容易なジベンゾスベレノンから数工程を経て鍵反応となる分子内二重不斉環化反応を経てキラル1,1´-スピロビインダン骨格を構築し官能基変換を数段階経てキラルビスヒドロキサム酸(spiroBHA)を合成する。一方、キラルリン酸はビナフトール骨格を利用し合成を達成する。その後金属や有機カチオン種とビスヒドロキサム酸塩やリン酸塩を合成し、触媒的不斉環化反応の検討を行う。
2.実験(Experimental)
主に利用した装置:高磁場NMR装置、赤外分光光度計、質量分析装置。常法の有機合成化学的手法を用いて化合物を合成し、これらの分析装置等を用いて化合物の同定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
3,3´-ジオキソ-1,1´-スピロビインダン-2,2´-ジカルボン酸ジメチルのトリフラート化体(1)を鍵中間体として合成経路の確立と光学分割を確立した。その結果97% eeでトリフラート化体を得ることに成功した。続いてフェニルボロン酸との鈴木・宮浦クロスカップリングと加水分解により種々の(R)-3,3´-ジアリールジカルボン酸を収率良く得た。ヒドロキサム酸は過剰量のN-メチルヒドロキシルアミンと塩基を用いることにより中程度の収率でN-メチルヒドロキサム酸を合成することに成功した。最後にチタン触媒を用いたo-プレニルフェノールの不斉エポキシ化を検討した。興味深いことにこの反応系ではエポキシ化体が系中で生じるとともに環化反応が速やかに進行し、主に5員環で環化したクマランが主生成物として得られることを明らかにした。パラ位にトリフルオロメチル基を有する電子不足型spiroBHA配位子において最も高い49% eeで生成物を得ることに成功した。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:キラルリン酸の提供および質量分析でお世話になった椴山儀恵准教授と大塚尚哉助教に感謝します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Tanaka, Y. Iwama, M. Kishimoto, N. Ohstuka, Y. Hoshino, K. Honda, Org. Lett., 22 (2020) p.p. 5207-5211.
(2) K. Tanaka, Y. Asada, Y. Hoshino, K. Honda, Org. Biomol. Chem., 18 (2020) p.p. 8074-8078.
(3) 浅田陽亮、田中健太、星野雄二郎、本田 清、第80回有機合成化学協会関東支部シンポジウム、令和2年12月18日.
6.関連特許(Patent)
なし

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