利用報告書

スプレードライによる微細藻類の乾燥方法の検討
池田 啓二1), 広川 安孝1)

課題番号                :S-20-NM-0030

利用形態               :機器利用

利用課題名(日本語)    :スプレードライによる微細藻類の乾燥方法の検討

Program Title (English) :Examination of drying method of microalgae by spray drying

利用者名(日本語)      :池田 啓二1), 広川 安孝1)

Username (English)     :Keiji Ikeda1), Yasutaka Hirokawa1)

所属名(日本語)        :1) 株式会社 シーエムディーバイオ

Affiliation (English)  :1) CMD Bio Inc.

 

 

1.概要(Summary)

近年、微細藻類を用いた有用物質生産が注目を浴びている。

弊社では、カロテノイドの一種であるフコキサンチン(以下、Fx)を生産ターゲットとして、原材料となる微細藻類の培養から抽出・精製までを一貫して行っている。Fx は、熱により分解されやすい物質とされているため、培養後に回収した藻体は凍結乾燥により乾燥させている。

今後、生産規模を拡大するにあたり乾燥工程が律速となることが予想されるため 代わりとなる乾燥方法としてスプレードライの有効性を検討する。

 

2.実験(Experimental)

【利用した主な装置】

 

【実験方法】

培養液を10倍以上濃縮し、凍結乾燥あるいはスプレードライによる乾燥を行った。凍結乾燥サンプル(以下、F.D.)、スプレードライサンプル(以下、S.D.)に含まれる Fx 量は、HPLCで測定した。また、S.D.をさらに凍結乾燥処理し、その処理の前後での重量の差分より含水率を求めた。

事前に乾燥条件の検討を行った際、下記の条件で凍結乾燥と同程度のFx含量の乾燥藻体が得られることが分かっている。

・入口温度(以下、Tin)150℃、ポンプ速度4.5 mL/min、

N2流量75 mL/min

サンプルの処理効率を上げるためにより高い Tin (180, 200℃) で噴霧した場合の影響を調べた。Tin 以外の条件は下記の通り固定して行った。

固定条件;アスピレーター100%、ポンプ速度4.5 mL/min、N2 流量87.5 mL/min

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

濃縮したサンプルは粘性を持っていたが、ノズルでの目詰まりも無く、連続的な処理が可能であった。

Cap.1 に Tin を変化させたときの乾燥結果を示す。S.D.の含水率は、Tin を上げてもほとんど変化はみられなかった。また、F.D.と比較して Fx量が低下することはなく、むしろどちらの条件でも 若干高い値を示した。

Cap.1. Water and Fx contents in dried biomass

  Water (%) Fx (%)
F.D. 1.317
S.D. – Tin 180℃ 4.756 1.547
S.D. – Tin 200℃ 4.571 1.536

この結果より、Fxは比較的に短時間なら高温条件下でもほぼ分解しないことが分かった。

これらのことよりスプレードライは、凍結乾燥の代替方法となり得ることが分かった。今後、さらに高いTin と送液速度の検討を行い、より高い処理効率を示す条件の探索を進めていく。

 

4.その他・特記事項(Others)

・NIMS服部様よりスプレードライヤーの装置の使用方法の説明と装置組立後と洗浄後の確認作業をしていただいた。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし

6.関連特許(Patent)

なし

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