利用報告書

ソルボサーマル法による発光ナノカーボンの合成
比江嶋祐介)、兼子穣
金沢大学

課題番号 :S-20-JI-0032, S-20-JI-0031, S-20-JI-0009
利用形態 :技術代行支援
利用課題名(日本語) :ソルボサーマル法による発光ナノカーボンの合成
Program Title (English) :Solvothermal synthesis of photoluminescent nanocarbon
利用者名(日本語) :比江嶋祐介)、兼子穣
Username (English) :Y. Hiejima、J. Kaneko
所属名(日本語) :金沢大学
Affiliation (English) :Kanazawa University

1. 概要(Summary )
発光ナノカーボン(CDs)は、安全安心かつ安価な発光材料として注目されているが、従来のCDsは主に青色発光のものが中心であり、発光波長の長波長化が求められている。我々は、高圧下の有機溶媒中で加熱するソルボサーマル法により赤色発光のCDsが合成可能であることを見いだした。本研究では、回分式反応器を用い、エタノール中において、ソルボサーマル合成したCDsのTEM像の観察およびXPS測定を行った。

2.実験(Experimental)
オルトフェニレンジアミンとカテコールを原料として、エタノール中に溶解し、容量約10mLのSUS316製の回分式反応容器内に封入した。反応容器を電気炉内で加熱することによりソルボサーマル合成した。生成したCDsをエタノールにて希釈し、TEMグリッド上に付着させ、真空中にて乾燥した。日立ハイテクノロジーズ社製透過型電子顕微鏡 H-7650によりTEM観察を行った。真空乾燥したCDs固体試料について、島津製作所製Kratos Axis-ULTRA DLDを用いて、XPS測定を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
CDsのTEM像を図1に示す。反応温度210℃で合成した試料においては、5-10 nm程度の粒子が観察されるが、反応時間の増大にともなって、コントラストが高くなっており、反応初期で粒子が形成された後も、粒子内部の構造が変化していることが示唆された。さらに反応が進むと、粗大粒子の生成が観察された。
CDsの窒素原子のXPSスペクトルを図2に示す。ナノ粒子が観察された条件においては、低エネルギー側へのシフトが観察され、縮重合によりアミド基の水素が脱離したことが示唆される。さらに反応が進むと、高エネルギー側にシフトし、ピリジン様構造が形成されたことが示唆される。

図1 各反応条件におけるCDsのTEM像

図2 各反応条件におけるXPSスペクトル(N原子 1s)

4.その他・特記事項(Others)
TEM観察に際しては、東嶺孝一氏、小林祥子氏の、XPS測定に関しては、村上達也氏、木村一郎氏の技術支援を受けた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
比江嶋祐介,林拓道,金久保光央“発光性ナノカーボン製造法”, 特開2017-043539, 平成29年3月2日

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