利用報告書

トリアザシクロノナン誘導体の合成
東村 秀之
岡山理科大学

課題番号 :S-19-SH-0015
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :トリアザシクロノナン誘導体の合成
Program Title (English) :Synthesis of a triazacyclononane derivative
利用者名(日本語) :東村 秀之
Username (English) :Hideyuki Higashimura
所属名(日本語) :岡山理科大学
Affiliation (English) :Okayama University of Science

1.概要(Summary )
 フェノール類の酸化重合は低負荷・低コストな芳香族ポリエーテルの合成法であるが、従来触媒ではフリーラジカルを生じ、カップリング選択性を制御できなかった。本研究者らは生体酵素に着目し、制御ラジカルを形成する人工酵素触媒(Cu(tacn))を見出し1)、2-フェニルフェノール(2-PhP)の高選択的酸化重合を達成した(Scheme 1)2)。本研究では、得られるポリマー(P-2-PhP)の高分子量化を検討した3)。

Scheme 1

2.実験(Experimental)
1)人工酵素触媒の合成(信州大学)
 既報1)を参考にして、トリアザシクロノナン誘導体である人工酵素触媒Cu(tacn)をScheme 2に示すように大量合成頂いた。

Scheme 2

2)2-Phenylphenolの酸化重合(岡山理科大学)
 人工酵素触媒Cu(tacn)を用いて2-PhPの酸化重合をO2雰囲気下40℃で行った。得られたP-2-PhPを再沈殿することにより低分子量成分をカットした。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 酸化重合だけではP-2-PhPの数平均分子量(Mn)は7,700であったが、再沈殿を組み合わせることでMnを65,000まで向上させることができた。P-2-PhPは高耐熱性と低誘電性を併せ持つことが期待され、高速通信用電子部品の絶縁材料に有望と考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
 本研究は、信州大学 浅尾直樹教授との共同研究によるものであり、ここに感謝申し上げます。また、科学研究費 基盤研究C 17k05890の助成を受けたものです。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
1) H. Higashimura, M. Kubota, A. Shiga, K. Fujisawa, Y. Moro-oka, H. Uyama, S. Kobayashi, Macromolecules, 33 (2000) 1986-1995.
2) 中野晟志, 玉置星都, 田中陸雄, 東村秀之, 人工酵素触媒による2-フェニルフェノールの精密酸化重合, 2019年日本化学会中国四国支部大会(ポスター発表)
3) 中野晟志, 玉置星都, 東村秀之, 2-フェニルフェノールの精密酸化重合における高分子量化,日本化学会第100回春季年会(口頭発表)

6.関連特許(Patent)
 なし

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