利用報告書

ドナーアクセプタ型電荷移動錯体の磁化測定
開康一1)
学習院大学理学部

課題番号 :S-16-MS-1050
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ドナーアクセプタ型電荷移動錯体の磁化測定
Program Title (English) :Magnetization measurements of donor-acceptor type charge transfer complex, HMTSF-TCNQ
利用者名(日本語) :開康一1)
Username (English) :K. Hiraki1)
所属名(日本語) :学習院大学理学部
Affiliation (English) :Gakushuin University

1.概要(Summary )
HMTSF-TCNQと略称されるドナーアクセプタ型分子性1次元伝導体の磁化測定を行った。申請者らが行ったNMR研究でドナー(HMTSF)積層の電気伝導への寄与は非常に小さくしかも100K以下で非磁性になる。一方、アクセプタの積層には伝導電子が存在し、30KでCDW転移することが明らかになった。この系の統一的な理解を得るためには系全体のスピン磁化率の測定が必要である。この物質のスピン磁化率は過去に報告されているが、この物質は試料依存性が大きいことが指摘されていた。本申請研究では良質かつNMR測定に用いた試料でスピン磁化率を測定することで信頼できるスピン磁化率を測定し、NMRの結果と合わせてこの物質の本質的な電子スピンの振舞いを明らかにする。

2.実験(Experimental)
機器センターのSQUID磁束計 MPMS7を用いて当該試料の磁化測定を行った。試料はNMR測定に用いたものを使用し、試料依存性の可能性を排除した。7Tまでのいくつかの磁場強度で300Kから5Kまでの温度範囲で磁化の温度依存を測定した。磁場強度で試料ホルダ(ブランク)の測定も同じ装置で行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
今回の測定で得られたスピン磁化率のとNMRシフト温度依存を図に示す。スピン磁化率は室温から単調に減少し、約100Kで常磁性から反磁性になり、約30K以下で一定値をとる。100K以上での磁化率の値は独立に行った13C-NMRシフトから算出した局所磁化率とよく対応している。これらのことから1) この系の低温での伝導はアクセプタ分子 (TCNQ) が支配的に担っており、ドナー (HMTSF) の寄与はあったとしても小さい、2) 今回不純物スピンの含有が非常に少ない良質の試料を用いて行った測定でも文献1で報告されている基本的な特徴を再現している、以上が明らかになった。NMRの結果を考えると、この系で得られている反磁性磁化率は文献(1)で指摘されたようにLandau-Peierls的な軌道反磁性である可能性が考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
(1) G. Soda et al., Solid State Commun. 20 107 (1976)
(2) K. Murata et al., J. Phys. Soc. Jpn. 79 103702 (2010)

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 杉浦亮、佐藤昌志、長谷川綾香、開康一、高橋利宏、中村敏和、村田恵三、加藤礼三 日本物理学会 2016年度秋季大会 平成28年9月13日 13pBG10
(2) R. Sugiura, M. Sato, A. Hasegawa, K. Hiraki, T. Takahashi, T. Nakamura, K. Murata and R. Kato, International Conference on Science and Technology of Synthetic Metals (ICSM2016, Guangzhou, China)
27jun2016
(3) 杉浦亮、佐藤昌志、長谷川綾香、開康一、高橋利宏、中村敏和、村田恵三、加藤礼三 日本物理学会 第73回年年次大会 平成29年3月20日 20aC21-7

6.関連特許(Patent)
なし

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